第七話 月曜の憂鬱
月曜日はダルい
おまけに雨だ
すぐに一服したくなるのを騙し騙し
タブレットを噛んだ
オフィスコーヒーはフル稼働している
当番の新人が今日何度目かのセットを
始めた
あけたばかりのピアスの穴が安定しないと
給湯室でぼやいていたので
透明ピアスを教えてやった子だ
「沙弓?」
不意に呼ばれて振り返った
隣の課の白戸朱音だ
「アカネじゃん ナイスタイミング!
眺めてるだけで飽きてきたところ
遊んでよー」
「製本?随分たくさんあるんだね」
「使えない新人より よっぽどお利口なコピー機だよ ま、使えないのは新人だけじゃないけどさ」
「新人さんにやらせたら良いのに」
「いや、良いの
月曜日はね スロースタートだから」
「さっき うちのコピー機を借りに来た人が忘れ物をしたから届けに来たの
名古屋から戻ってきた人、名前なんだっけ?」
「あー、田城さんかな
ほら、あそこの席」
「了解」
白戸朱音の後ろ姿
形のよいヒップを見ながら自分好みであることを改めて感じた
入社してすぐ
御殿場の施設で泊まりの研修があり
白戸朱音とは同室だった
清楚なお嬢さん風で
同期の男性社員たちの一番人気だった
研修最終日の夜
食堂で開かれた打ち上げのあと部屋に戻り
ベッドに並んで腰かけ
明日は本社で配属発表だね
なんて話しながら
そのまま仰向けに横になると 朱音もそれにならった
天井を見ながらお互いの家庭の事情とやらを話した
死別した父親
すぐに再婚した母親
生死もわからぬ母親
娘の存在を無視し続ける父親
厄介な親のオンパレードだ
のばした手の先に朱音の髪が触れた
隣の部屋から笑い声や
グラスをカチャカチャさせる音が聞こえてくる
福岡や大阪から参加した者は 本社で辞令を受けた後 それぞれの支社へ帰る
避けるように皆がその事を口にしないでいた
体を半回転させ
朱音を両腕のなかにすっぽりととらえた
前髪の生え際の辺りに
唇をおしあて髪の匂いを嗅ぐ
朱音も腕をまわして
私の背中で手を組んだ
ひょっとしたら…
朱音も同じ嗜好の持ち主かも…
両手で朱音の顔を包んで
躊躇いながら
唇までの距離をじわじわと縮めていった
朱音の睫毛が伏せられたのと ほぼ同時に
私たちはキスをした
角度を変えて舌を入れ
朱音の舌に絡ませた
「沙弓…」
顎と喉に舌を這わせ 朱音の胸を揉んだ
「沙弓…駄目よ」
「どうして?駄目?
アタシはね、男とはしないの
朱音を初めに見たときからずっとこうしたいと思ったんだ」
「私は経験ないわ
ごめん、出来ないよ」
ああ
やっぱり…
落胆の闇が広がる
しばらく朱音の体を抱きしめて高ぶりが鎮まるのを待った
長いような
実際には短い時間だったかもしれない
コピー機の前から田城史哉の表情がよく見えた
赤い顔をしちゃって
朱音はファザコンだから無理だよー?
二人の更に向こう 窓際に
腫れぼったい目蓋の下に
もはや線にしか見えない目で朱音を睨む
三嶋美雪の姿があった

月曜日はダルい
おまけに雨だ
すぐに一服したくなるのを騙し騙し
タブレットを噛んだ
オフィスコーヒーはフル稼働している
当番の新人が今日何度目かのセットを
始めた
あけたばかりのピアスの穴が安定しないと
給湯室でぼやいていたので
透明ピアスを教えてやった子だ
「沙弓?」
不意に呼ばれて振り返った
隣の課の白戸朱音だ
「アカネじゃん ナイスタイミング!
眺めてるだけで飽きてきたところ
遊んでよー」
「製本?随分たくさんあるんだね」
「使えない新人より よっぽどお利口なコピー機だよ ま、使えないのは新人だけじゃないけどさ」
「新人さんにやらせたら良いのに」
「いや、良いの
月曜日はね スロースタートだから」
「さっき うちのコピー機を借りに来た人が忘れ物をしたから届けに来たの
名古屋から戻ってきた人、名前なんだっけ?」
「あー、田城さんかな
ほら、あそこの席」
「了解」
白戸朱音の後ろ姿
形のよいヒップを見ながら自分好みであることを改めて感じた
入社してすぐ
御殿場の施設で泊まりの研修があり
白戸朱音とは同室だった
清楚なお嬢さん風で
同期の男性社員たちの一番人気だった
研修最終日の夜
食堂で開かれた打ち上げのあと部屋に戻り
ベッドに並んで腰かけ
明日は本社で配属発表だね
なんて話しながら
そのまま仰向けに横になると 朱音もそれにならった
天井を見ながらお互いの家庭の事情とやらを話した
死別した父親
すぐに再婚した母親
生死もわからぬ母親
娘の存在を無視し続ける父親
厄介な親のオンパレードだ
のばした手の先に朱音の髪が触れた
隣の部屋から笑い声や
グラスをカチャカチャさせる音が聞こえてくる
福岡や大阪から参加した者は 本社で辞令を受けた後 それぞれの支社へ帰る
避けるように皆がその事を口にしないでいた
体を半回転させ
朱音を両腕のなかにすっぽりととらえた
前髪の生え際の辺りに
唇をおしあて髪の匂いを嗅ぐ
朱音も腕をまわして
私の背中で手を組んだ
ひょっとしたら…
朱音も同じ嗜好の持ち主かも…
両手で朱音の顔を包んで
躊躇いながら
唇までの距離をじわじわと縮めていった
朱音の睫毛が伏せられたのと ほぼ同時に
私たちはキスをした
角度を変えて舌を入れ
朱音の舌に絡ませた
「沙弓…」
顎と喉に舌を這わせ 朱音の胸を揉んだ
「沙弓…駄目よ」
「どうして?駄目?
アタシはね、男とはしないの
朱音を初めに見たときからずっとこうしたいと思ったんだ」
「私は経験ないわ
ごめん、出来ないよ」
ああ
やっぱり…
落胆の闇が広がる
しばらく朱音の体を抱きしめて高ぶりが鎮まるのを待った
長いような
実際には短い時間だったかもしれない
コピー機の前から田城史哉の表情がよく見えた
赤い顔をしちゃって
朱音はファザコンだから無理だよー?
二人の更に向こう 窓際に
腫れぼったい目蓋の下に
もはや線にしか見えない目で朱音を睨む
三嶋美雪の姿があった
