キスはテクニックよりシチュエーションだと思う。キスをするという行為が日常に溶け込みすぎてしまうと幸福感は得られても刺激は遠のいてしまう。
披露宴の二次会に出席した後 まだ早いから飲み直そうという話になった。引き出物の大きな手提げをめいめいが持っていたので数駅先の友人のアパートに移動した。小さな冷蔵庫にぎゅうぎゅうに詰め込んだアルコール類があっという間に消費されていく。スーパーがまだ空いてる時間だったので、皆があれこれ言い始める前に買い出しに行くと告げさっと部屋を出た。追いかけてきたのは
みんなは知らないけれど ほんの一時期お付き合いをしていた彼。なぜそうなったのか思い出せないくらい曖昧な別れ方をした。閉店間際のスーパーには驚くほどサラリーマン風の男性が目立つ。値引きされた惣菜や弁当が次々にかごに入れられていく。すぐに食べられそうな揚げ物や海苔巻きを確保して 乾き物とビールや缶チューハイをカートに入れた。重いものは彼が持ってくれたけど踏切で上下線三本の通過を待つあいだにレジ袋の持ち手が指に食い込んで痛み始めた。応援を呼ぼうか、という彼に首を振り来た道を足早に歩く。
街灯の下でレジ袋を持ち替えていると
「あの時さ…誤解したでしょ?」
背中から彼が問いかける。
あの時、、どの時だっけ…