「初めて会ったときあなた怖かったわ
ひと回り以上も歳上で
すごく気難しい顔をしていたもの」
「君が俺の年齢に近づいたとでも?おかしなことを言うやつだな」
チェックイン迄の時間
広い池を擁する人工地盤庭園を眺めながら
懐石料理が運ばれるのを待った
「オンナは40過ぎたら
年齢なんて関係なくなるのよ
若い男とつき合うときは若い男の年齢に
歳上の男とつき合うときは歳上の男の年齢に
自分の年齢感覚をシフトしてしまうの」
真っ白なおしぼりで丁寧に手をふきながら
少しだけ身を乗り出して話しかける
「ほう…若い男と寝たのか」
「どうかしら…妬いてくれる?」
「いいや
束縛し合わないという考えを変えるつもりはない
好きにすれば良い」
そう…
この人はそうなのだ
結婚したいと言った私にハッキリとNOを告げた
「サラリーマンでも自営業でもいい
家に帰ってくる男と結婚しろ
俺は今の生活のスタイルを変えるつもりはない
淋しいと泣かれるのも泣いてる女を想像して気持ちがブレるのもお断りだ」
結婚は打算だった
最愛の男と一緒になれないなら誰としても同じ
そう思って、さっさと決めてしまった
執着していないと思わせたかったし
愛しているからこそ自由にしてあげたかった
だけど…
人生をかけて愛するのは
目の前にいるこの男だけ
私は懇願した
年に一度で良い
私のために時間を作って欲しい
その日を励みにして生きていくから…
それは
バイヤーに憧れていた私を
ミラノへ連れ出してくれたとき
フィレンツェのドゥオモを見たいと言う私のわがままを聞いて 二人で訪れた
サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の
「最後の審判」が描かれたドームのしたで
覚えたてのイタリア語で
「Ti piaccio?」
と聞いたときよりはるかに胸が震えていた
あなたは何も答えなかった
けれども毎年7月になると
ヨーロッパのどこかの国からメールが届いた
短い 短い文面で
あなたは愛を囁くように私の心を歓喜させる
「好きに出来るなら…今の生活なんて
とっくに放り出しているわ
聞き分けが良いのも体には毒ね」
「お前の居場所は守ってやりたい」
「家に帰ってくる男と結婚しろと、あなたは言った
居場所なんて必要だったのかしら?ただの箱よ
だんだんわかってきたの
待つことなんてなかった
私も世界を飛び回って
時々どこかであなたと
交差する…それこそが理想だった
あなたがせっかく仕事のチャンスをくれたのにね」
「そういう道を選んでいたら
こんな男のことはどんどん後回しになって
交差するどころではないだろうな」
目尻を指でなぞって精一杯の笑顔をつくる
「Ti piaccio?」
「Anche se siamo cosi lontani guardiamo
la stessa luna.」
笑顔をつくることに
なんの意味があるというの
私たちは
私たちのやり方で
愛を全うするだけ
「お願い…早く部屋へ連れていって…」
もう、充分に待った
充分に、待たせた

補足
Ti piaccio?
私のこと好き?
Anche se siamo cosi lontani
guardiamo la stessa luna.
遠く離れていても同じ月を見ている
ひと回り以上も歳上で
すごく気難しい顔をしていたもの」
「君が俺の年齢に近づいたとでも?おかしなことを言うやつだな」
チェックイン迄の時間
広い池を擁する人工地盤庭園を眺めながら
懐石料理が運ばれるのを待った
「オンナは40過ぎたら
年齢なんて関係なくなるのよ
若い男とつき合うときは若い男の年齢に
歳上の男とつき合うときは歳上の男の年齢に
自分の年齢感覚をシフトしてしまうの」
真っ白なおしぼりで丁寧に手をふきながら
少しだけ身を乗り出して話しかける
「ほう…若い男と寝たのか」
「どうかしら…妬いてくれる?」
「いいや
束縛し合わないという考えを変えるつもりはない
好きにすれば良い」
そう…
この人はそうなのだ
結婚したいと言った私にハッキリとNOを告げた
「サラリーマンでも自営業でもいい
家に帰ってくる男と結婚しろ
俺は今の生活のスタイルを変えるつもりはない
淋しいと泣かれるのも泣いてる女を想像して気持ちがブレるのもお断りだ」
結婚は打算だった
最愛の男と一緒になれないなら誰としても同じ
そう思って、さっさと決めてしまった
執着していないと思わせたかったし
愛しているからこそ自由にしてあげたかった
だけど…
人生をかけて愛するのは
目の前にいるこの男だけ
私は懇願した
年に一度で良い
私のために時間を作って欲しい
その日を励みにして生きていくから…
それは
バイヤーに憧れていた私を
ミラノへ連れ出してくれたとき
フィレンツェのドゥオモを見たいと言う私のわがままを聞いて 二人で訪れた
サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の
「最後の審判」が描かれたドームのしたで
覚えたてのイタリア語で
「Ti piaccio?」
と聞いたときよりはるかに胸が震えていた
あなたは何も答えなかった
けれども毎年7月になると
ヨーロッパのどこかの国からメールが届いた
短い 短い文面で
あなたは愛を囁くように私の心を歓喜させる
「好きに出来るなら…今の生活なんて
とっくに放り出しているわ
聞き分けが良いのも体には毒ね」
「お前の居場所は守ってやりたい」
「家に帰ってくる男と結婚しろと、あなたは言った
居場所なんて必要だったのかしら?ただの箱よ
だんだんわかってきたの
待つことなんてなかった
私も世界を飛び回って
時々どこかであなたと
交差する…それこそが理想だった
あなたがせっかく仕事のチャンスをくれたのにね」
「そういう道を選んでいたら
こんな男のことはどんどん後回しになって
交差するどころではないだろうな」
目尻を指でなぞって精一杯の笑顔をつくる
「Ti piaccio?」
「Anche se siamo cosi lontani guardiamo
la stessa luna.」
笑顔をつくることに
なんの意味があるというの
私たちは
私たちのやり方で
愛を全うするだけ
「お願い…早く部屋へ連れていって…」
もう、充分に待った
充分に、待たせた

補足
Ti piaccio?
私のこと好き?
Anche se siamo cosi lontani
guardiamo la stessa luna.
遠く離れていても同じ月を見ている