『その女アレックス』(ルメートル作 橘明美 文春文庫2014.9)
ルメートルの作品に魅せられて、最も有名な作品に手を出した。
ここ3冊読んでて、彼の作品の魅力の本質をうっすら感じていたのだが、
この作品で、それが確信に変わりました。
それは
人の二面性、です。
どんな悪人でも、善き魂はもっており、
どんな善人でも、悪事に傾く性質がある。
だから彼の作品の登場人物は、その「善悪」が物語の進行につれ浮き彫りになることがあって、
それがドラマの展開に意外性を富ましています。
今回の主人公アレックスがまさにそれ。
フランス、イギリスなどで多くの賞を受賞した作品であることも、その面白さが一因だったのでは想像します。
前半分はものすごく面白かったのですが、
物語の後半が、「さもありなん」って感じで、そこに行きついたか、ちょっと安易だな、と思いました。
同様のテーマの小説をここのところ数多く読んでいるのでそのテーマは食傷気味。
したがって厳しい感想です。お許しください。