『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈 新潮社)を読んで | 日々感じたこと・読んだ本

『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈 新潮社)を読んで

滋賀県大津市膳所に住む成瀬あかりを主人公とした物語で短編の連作。

成瀬が中学2年生の時から高校3年生までの間の6つの短編から成っている。

最初の一作の書き出しが

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」からはじまるが、

この一言こそが成瀬あかりという個性的で魅力的な女子の性格を雄弁に物語っていると思う。

同級生を姓で呼ぶ。

捧げる、という古風めいた言い回し。

そして「西武」という地元のものに対する愛着。

「~思う」という決意の強さ。

「デパートにひと夏をささげる」という型破りな発想

 

上記の「姓で呼ぶ」「古風めいた言い回し」「地元のものに対する愛着」「決意の強さ」「型破りの発想」

これらおよそ現実にはいそうにない女子中学生の特徴をもち、自ら「200歳まで生きる」ことを目標にして己を信じ、己を律しながラ生活する、まるで女武士のような気持ちのよい女子。

書店さんが選んだ「最も売りたい本」の今年の1位に選ばれたのも、読んでみてよくわかった。

彼女のまぶしさ、行動の線のきれいさ、聡明さ、KYという弱点さえも美しい、そんな、郷土愛にあふれた真っすぐな女子とそれをとりくまく友人たちや大人との爽やかで楽しい読後感を感じさせてくれる佳作ぞろいだと思った。

 

そして、単行本の表紙もいいが、一枚めくった中面のタイトルページのイラスト、このイラストのかわいらしさにやられてしまった。このへなちょこだけど目線がキリっとしてて自分の道を行こうとする意志の強さと清廉さ、そして、マスクに下手な字で手書きされている

「ありがとう

西武大津店」

のいたいけで泣かせるメッセージ。

 

まったくもって魅力的なヒロインの登場だ☆彡

このワクワク感は昔読んだ漫画『バタ足金魚』(望月峯太郎)の「わけわかんねー」男、花井薫の登場を彷彿させてくれるた!

 

読んですぐ次作『成瀬は信じた道をいく』を購入した。