ヴィム・ヴェンダース監督作品役所広司主演『Perfect Days』を観て | 日々感じたこと・読んだ本

ヴィム・ヴェンダース監督作品役所広司主演『Perfect Days』を観て

 2024年4月30(火)に下高井戸の下高井戸シネマで観ました。

 

 最後に映画館を訪れたのはいつ頃だったか覚えてないくらい昔ですが、この映画は前評判を見て「考えさせられる映画だ」と直感し、観に来ました。

 

 役所広司がいい。

 演じるのは区役所の公共トイレの清掃委託を受けている会社に勤める独り身の初老(60代前半)の男。その日常(まさに朝起きてから、眠るまで)の孤独な暮らしを追う映画。

 

 見ているうちに、自分の暮らし(時間の使い方)に似ているところもあるな(自分もほぼ同世代で単身赴任中なので平日は一人暮らし)と思ってたら、主人公が夜寝る前に少しづつ読んでいる本の背表紙が見えて愕然としてしまいました。それ、今私が同じように毎晩読んでいて、なかなか進まない本ではありませんか?(フォークナー「野生の棕櫚」)

 

 彼の暮らしぶりと仕事ぶり、そして人との接し方にはとても共感を得ましたが、途中に小さな出来事(若い相棒がやめる、相棒の彼女から好意をもたれる、姪が家出して泊まりに来る、それを妹が迎えに来る、飲み屋のママさんが知らない男と抱き合っている所を目撃してしまうなど)が出てきて、それらがすべてちょっとづつツッコミどころがあって、結果物語が破綻の域にまで達しそうではらはらしてしまいました。

 

 また、いかにも「日本」を意識するような外国人監督の眼差しが少し鬱陶しいい、結局、何を描きたかったのか、ラストまでわからない物語でした。

 

 そして、とても残念だったのが、スポンサーからみだから仕方ないのかもしれませんが、掃除するトイレがいずれもアーティスティックな斬新なものばかりで、これって「クールジャパン」的な良さを世界に発信するコンテンツなの?って一気に鼻白んでしまったのでした。さらにパティ・スミスの曲など、聴けたのはとてもうれしかったんだけど、なんだか、観る人(60代)に阿(おもね)ているように感じちゃったのです。

 

 役所広司ほか演者たちの人間ドラマがとてもよかったので、そのうちのどれかひとつでもいいから、最後まで見せてもらいたく、あいまいな終わり方が残念だったのでした。