藤原緋沙子さん著『月下恋』(藍染袴お匙帖「雁渡し」収録第三話)を読んで | 日々感じたこと・読んだ本

藤原緋沙子さん著『月下恋』(藍染袴お匙帖「雁渡し」収録第三話)を読んで

双葉文庫で出版された藤原さんの書き下ろし時代小説「藍染袴お匙帖」シリーズは

2021年で累計100万部を超えたので大人気作品かと思います。

 

この作品は、同シリーズの中でも比較的長い短編で、中編と言ってもよさげかもしれません。その分、展開が多く、だからこそ 味わいも濃いかと思います。

 

今回のアイテムは「笛」「遠島(流刑罪)」などでしょうか。

 

理由あって藩から追われる身となって身をやつした上に行方不明となった父、そして母も亡くなり、大店の養女とは名ばかりに体のいい召使として酷使されなかがらも、「千鶴先生のような医者になりたい」と向学心に燃える娘。

 

傷ついた拍子に記憶が失われた男を助け、家に匿ったことで愛が芽生え、その思いと、男を後に残す心配を胸に人を殺めた罪で遠島に流される女。

 

上役の藩費横領の不正を知り、逼迫した財政下の民を救おうと命をかけて上訴しようとする武士の悲劇。

 

それらのドラマが最後に交錯し、やがて男の強い思いが記憶を戻させた時に、

またあらたな悲劇と希望が訪れるのでした。

 

島に送られる女が不憫で、思わず江戸時代の流罪後の生活ぶりをインターネットで調べてしまいました(笑)。

 

親と子、そして人と人との結びつき、男女の愛の絆の深さなどが幾重にも交差している名作です!