藤原緋沙子 『鬼の鈴~秘め事 おたつ二~』を読んで | 日々感じたこと・読んだ本

藤原緋沙子 『鬼の鈴~秘め事 おたつ二~』を読んで

元、某藩の奥女中をしきっていた老女がある使命を胸に長屋の高利貸しを営む。周囲から親しまれるその女性、おたつは根っからの姉御肌。

 

まわりでおこる様々な事件のもと不幸になる人を放っておけず、彼女のまわりで起こる事件が描かれる。

 

表題にもなっている「鬼の鈴」は、藩の上役から濡れ絹を着せられた上に命を狙われるという元藩士が、浪人に身をやつし病の身をおしながら、生き別れになった娘をさがしているのを、ほっておけなくなったおたつが娘探しに顔見知りの人々からの協力も得て、解決しようとする話。

 

おたつさんの人柄がいきいきと描かれており、ああ、こういう人が周囲に一人でもいたら、この小説にもあるように貧乏だけど明るく助け合いながら生きていくという雰囲気が醸し出されるのだろうな、と思わせる名作です。

 

武家と町人と、二つの異なる人間社会に生きた主人公のおたつだからこその采配ぶりが見事であるし、根っからの人好きで、困った人を放っておけないきっぷの良さと義侠心は物語の感慨に深みを与えてくれています。