藤原緋沙子『月凍てる 九段坂 冬』~人情江戸彩時記~(新潮文庫表題『月凍てる』)を読んで | 日々感じたこと・読んだ本

藤原緋沙子『月凍てる 九段坂 冬』~人情江戸彩時記~(新潮文庫表題『月凍てる』)を読んで

坂ものがたりの最終、第4話。

 

傑作である。

 

なんとも哀しい話だが、その哀しさは、気持ちの持ちようであって、本人の気持ち次第では、むしろ喜ばしいことになりうる・・・・そんな不確実ではあるが、「絶望」には陥らない作者独特の人を見つめる優しいまなざしを感じさせる結末をもつ。

 

主人公の又四郎、そして そのおさななじみのおふく。

この2人の運命のありようは、「世間」に対峙する男と、「恋」に生きる女の違いにより、押しつ押されつの関係に終止符が押される。

 

「これで本当によかったのか・・・」

と独りごちるであろう又四郎の後ろ姿を、

第二の人生の門出として捉えるか、それとも・・・。