藤原緋沙子「『雪婆』『再会』~藍染袴お匙帳~」 を読んで | 日々感じたこと・読んだ本

藤原緋沙子「『雪婆』『再会』~藍染袴お匙帳~」 を読んで

コミュニティ型の古本屋「不便な本屋」に立ち寄って、陽が差したテラス席でアイスコーヒーをいただきながら何気に手に取った文庫分でしたが、おもいがけずぐいぐい物語に吸い込まれ、購入し、家に帰って夢中になって読んでしまいました。

時代小説でここまで心地よい没入感をもちながら、そして、気持ちいい読後感が得られる作品はそうないのではないでしょうか?藍染袴お匙帳 というシリーズらしいので、二冊目を見つけて、年末年始に読みたいと思います。

 

『再会』 置き屋で弟の学費のために身を売って働く女が結核の兆しが見えてしまうという、同情せずにはいられない設定ですが、そこからが意外な話になります。でも読後感がいいので、じわっと人情を感じる作品です。

 

『雪婆』 これは傑作かもしれません。文庫本の表紙のイラストがすべてを物語っています。瑞々しく、哀しく、情感たっぷりな時代小説。

 

いつも思うのですが、このての良質な短編時代小説を読むと、なんだか、温泉露天風呂にじっくり身を浸して上がった時のようなえもいえぬカタルシスを感じてしまいます。物語の面白さを十分堪能できる一冊でした!