いつも泣かない。
いつも泣けない。
あなたが挫けたときも。
あなたが倒れたときも。
あなたが一人で旅立ったときも。
わたしは泣かない。
ただ黙ってすべてを受け容れる。
目の前の出来事。
目の前の悪夢。
目の前の孤独。
ただ黙ってすべてを受け容れる。
それがわたしの愛。
わたしの愛しかた。
愛されたくて愛し合ったんじゃない。
愛したくて愛を貫いただけ。
報いは不要だった。
必要なのは存在だった。
愛し続けるための、
支え続けるための、
見守り続けるための、
わたしが貫く想いを一身に受ける存在だった。
それはきっと、獲物だった。
獲物は気付いた。
甘い蜜を与えられるだけの安穏とした世界。
その世界を授受するだけに存在する己。
それは己の願う愛ではないと気付いた。
気付いたから、逃げた。
わたしの愛の檻は空。
からっぽの檻はむなしい。
あなたの側で愛される猫になりたい。
側に居るを許されるなら『わたし』はいらない。
そう思ったのは間違いだった。
だから泣かない。
だから泣けない。
夜も闇も孤独もすべて、
あなたが残したものだから。
あなたが与えるものすべて、愛をもって受け容れよう。