泣かない夜 | ・・ 夢と現の朧なる ・・
いつも泣かない。

いつも泣けない。



あなたが挫けたときも。

あなたが倒れたときも。



あなたが一人で旅立ったときも。



わたしは泣かない。



ただ黙ってすべてを受け容れる。



目の前の出来事。

目の前の悪夢。

目の前の孤独。



ただ黙ってすべてを受け容れる。



それがわたしの愛。

わたしの愛しかた。



愛されたくて愛し合ったんじゃない。

愛したくて愛を貫いただけ。



報いは不要だった。



必要なのは存在だった。



愛し続けるための、

支え続けるための、

見守り続けるための、



わたしが貫く想いを一身に受ける存在だった。







それはきっと、獲物だった。







獲物は気付いた。



甘い蜜を与えられるだけの安穏とした世界。

その世界を授受するだけに存在する己。



それは己の願う愛ではないと気付いた。



気付いたから、逃げた。







わたしの愛の檻は空。

からっぽの檻はむなしい。







あなたの側で愛される猫になりたい。

側に居るを許されるなら『わたし』はいらない。



そう思ったのは間違いだった。



だから泣かない。

だから泣けない。



夜も闇も孤独もすべて、

あなたが残したものだから。



あなたが与えるものすべて、愛をもって受け容れよう。