存在し得ない、『たとえば』のお話。
父様が私を連れて『おうち』に帰っていたら。
私は『おうち』で、
いわゆる英才教育を受けて、
多くの人々に愛されて、
守られて育てられただろう。
世界の醜い部分とか、
貧しさとか、
苦しみを背負った人のことを、
どこか遠くの出来事としか感じられない場所で、
大事に育てられただろう。
そうして多くの力に支えられ、
いつか人を治める立場に立つ事と。
父様も母様も居ない世界で、
陽の当たらない世界で、
過酷な現実世界の姿を見て、
平穏な暮らしや家族の暖かさが分からないこの私が、
人を治める立場に立つ事と。
それは、どっちが人々にとって幸せな未来を切り拓けるのだろうか。
比べるだけ、無駄な話。
比べるだけ、無意味な話。
だけど考えてしまうことがある。
私が父様の『おうち』で、愛されて育てられていたら。
あるいは、貴方と違う出会い方をしていたら。
そんな、取り戻せない時間の向こう側のこと。