前回までに株価はなぜ動くかという話をしましたが、そのいろいろな株価が動く要因を専門家の世界では役割分担してカバーしています。


そこで、株価がなぜ動くかということをもう少し実感として理解してもらうために、それぞれを担当する専門家の話をしようと思います。


プロの世界でそれらをカバーする職種には、アナリスト、エコノミスト、ストラテジスト、クォンツ・アナリスト、テクニカル・アナリスト、チャーチストなどがある。


一方、それらを利用する職種の代表がファンドマネージャーであり、そのほかディーラーなどの職種がある。


また、若干フィールドは異なるが、市場全体の構造論を研究しているのが学者であり、金融機関にもその分野を研究している人がいる。



まずは、ファンダメンタルをカバーする職種を説明します。


企業業績を追いかけているのがアナリストである。アナリストは、経済情勢を踏まえながら、個々の産業、個々の企業の業績を予測し、妥当な株価を導き、個々の企業にレーティングをつけるという作業を行っている。


しかし、すでに本レポートで述べたように、株価は個々の企業の業績だけで決定されるわけではない。個々の企業の業績以外にも株価の決定要因は多い。


しかし、それらの要因に関して研究しているアナリストは少ない。そのため、アナリストが行っている業務は、個々の企業の同業種内における相対価格、もしくは相対価値を求めることと解釈するのがいいだろう。


しばしば、前回までの議論を飛ばして、アナリストのレーティングは当たらないとか、アナリストは市場を理解していないと非難されることがあるが、それはむしろ非難する方の株式市場の構造に対する理解不足に問題があろう。


ただし、有能なファンドマネージャーには、そのことを十分理解している人も多い。


一方、アナリストはアナリストで同じく市場構造を理解していないので、非難に対して十分な反論ができないため、むしろ本源的価値の追求をやめて、短期的な株価に影響を及ぼす情報の追求に熱心な人も増えている。



エコノミストという職種は経済情勢について研究をする職種である。


純粋に経済動向についてのみコメントする人と、ややストラテジスト的に株価動向に関してもコメントする人がいる。


ここまでの職種に関して言えば、前回までに説明した株価変動要因のうち、主にファンダメンタルによる部分の研究を行っているものである。


ただし、ファンダメンタルと株価の関係の分析自体は以下の職種の専門領域となる。



次は、ファンダメンタルと株価の関係を分析する職種である。



ストラテジストは、産業全体の業績動向や金融情勢、為替動向、投資家動向などを踏まえて全体相場の水準やセクターの物色動向についてコメントをする。


それぞれ人によって得意とする分野があり、もともとエコノミストだった人、もともとテクニカル・アナリストだった人などがいる。


私の知り合いにももともとアナリストをやっていて、株価を予測する限界を感じ、ストラテジストに転じた人がいる。


クォンツ・アナリストは市場のデータ分析を通じて、マーケットで起こる変化を予測する。また、リターンの源泉となりそうな指標を探したりする。たとえば、市場環境を踏まえ、PERが低そうな株が上がりそうだとか、PBRの低そうな株が上がりそうだとかいうような分析である。もちろん、自分独自の指標を発見して使う場合もある。


このほか、日経ヴェリタスのアナリストランキングで集計している職種で言えば、市場分析アナリストや金利・為替アナリストがある。


市場分析アナリストは比較的新しい区分であり、私にははっきりとした区分が理解しにくいが、ストラテジストとクォンツ・アナリストの中間的な位置づけのようである。


金利・為替アナリストも重要であり、第1章で述べた金融情勢などの判断に欠かせない。


前者のアナリスト、エコノミストと比較して後者は、ファンダメンタルの見方をベースにおいて、株価の変動を研究している。


しかし、基本はファンダメンタルであり、プラスアルファとして、株価の中期循環の分析を交えていることもある。


ただし、このように細かな職種わけにはなっているが、その境界はかなりあいまいである。


一方、それらの人々の日々のコメントを見ると、短期的な株価動向に対するコメントを含むことがある。中にはその部分を専門に研究している人がいるかもしれないが、大方はそうではないだろう。


もちろん、アナリストでも銘柄の説明をするときに、専門外の市場動向に関してコメントすることもある。それは、そのほうが聞いているほうが理解しやすいと考えるためである。


つまり、聞くほうとすれば、それぞれの意見を聞く場合、その人の専門とする分野と知識として付加的に述べていることを区分して聞くことが賢い聞き方となる。


もちろん、それはそう簡単ではないが、常にその人の専門分野を意識しておくことが大切である。





今回は、ファンダメンタルとは無関係な株価変動について述べよう。



ファンダメンタル要因の変化による株価変動とやや循環性のある中期変動およびランダムな短期変動という株価のブレとも呼べる価格変動要因との関係を見る。


まず、株価の中期循環(D)と株価の短期変動(E)のグラフを示す。



ゼロから始める株式投資-20110429-1
(このグラフはクリックすると拡大できます。)


株価の中期循環は、機関投資家の資金事情、信用取引や配当の影響によると考えられる。


機関投資家では、資金の性格によって資金が入ってくる時期が決まっているため、売り買いがそれによって影響を受けることがある。


また、ファンドの決算期が12月や3月に集中していることから、そのことによっても株価は影響を受ける。


一方、信用取引は仮需であり、6ヶ月以内に決済しなければならない(6ヶ月信用取引の場合)。


それによっても循環が生じることがある。


これらはともに上昇局面と下落局面でレスポンスが異なるため、その時々で影響の現れ方は異なる。


また、昨今は配当利回りが高くなっているため、配当目当ての株の売り買いというものもある。


これらが複合的に影響して、中期循環が生じると考えられる。


株価のベースになるファンダメンタルはあらゆる経済現象の動きの結果であり、その日々の変化は多様であって、その全体の変化を日々正しく認識することはできない。


しかし、それらが断片的にデータとして目に見えるものになり、ニュースになって多くの人の耳目に入ると、個々人がそのニュースに反応して株式市場でも行動を起こす。


それによって株価が変動すると、その株価の動きを見て行動を起こす人もいる。


その結果、ファンダメンタルは多様な動きではあるが、緩やかな動きであるにもかかわらず、株価は日々めまぐるしく動くことになる。


しかし、必ず最後はファンダメンタルが示す位置に収束するのが株価である。


以上の考え方は、さまざまな研究データから見た、単純化した形の株価変動のモデルである。


もちろん、現実の株価はここで述べた以外の要因によっても影響を受けるため、さらに複雑な動きとなる。


ただし、このようなモデルで株価というものを考えると、株式市場で起こるさまざまな現象を解釈しやすくなる。


よって、当ブログではこのようなモデルで話を進めることにする。





今回のテーマは、株価の変動要因です。



株価の変動を模式的に表すと、大きく分けてファンダメンタルの変動によるものと価格そのもののランダムな変動によるものがある。


ファンダメンタルはまた二つに分けることができ、個々の企業の業績と世の中一般の金融情勢である。


一方、価格のランダムな変動はきれいに分解することは難しいが、主として中期的な循環と秒単位の超短期から数日間の短期変動に分けられる。


(1) ファンダメンタルの変動による株価変動


個々の企業の業績による株価変動は長期トレンド(A)と中期循環(B)に分けることができる(A、B、C・・・の記号は図中の記号を示している)。


米国における超長期の分析によれば、株式のリターンは純資産の増加と配当利回りの合計値に等しいものとなっていることからも、株価の長期トレンドの主因は企業業績であることがわかる。


一方、長期的な影響は小さいと思われるが、中期的に株価に大きな影響を与えるのが金融情勢の変化による株価の変動(C)である。


つい最近あったリーマンショックのような金融危機では、世界的に金回りが収縮するため、株価は企業の実態価値を大きく下回って売られることになる。


一方逆に、1980年代末の日本のように超金融緩和状態になると、株価は企業の実態価値以上に大きく上昇し、いわゆるバブル状態となる。


しばしば、不況で企業業績が厳しいにもかかわらず、株価が上昇することがある。いわゆる、不況下の株高と言われるものの背景も金融緩和である。これは投資資金の逃避先という面からも解釈することができる。


つまり、お金を何で運用するか考えた場合、不況が続きそうであると考えれば、直接、事業に投資しても見返りが期待できないし、リスクも大きい。


そこで、株式投資に向かうというわけである。 以上のA、B、Cの要因によって決定される株価を(A+B)*Cのグラフに示した。


ここまでが、ファンダメンタルに依存した株価の変動である。なお、ファンダメンタルはここまで示したように大きく分けて企業業績と金融情勢の二つの要因を含むが、前者の企業業績だけをファンダメンタルと表現する場合も多い(下の図を参照)。



ゼロから始める株式投資-20110428-1
(この図はクリックすると拡大できます。)


このようなファンダメンタルに基づいた株価変動がベースにあって、そこにかく乱要因としてそれらのファンダメンタルとは別の短中期の株価変動が加わり、現実の株価は決定されていると考えられる。