「ここ…どこ?」

どこを見回しても真っ暗で人の気配がなかった。

「…そうか…私っ」

気を失う間際に見た光景が頭の中に流れ込んだ。

「あの力を使っちゃったんだ…」

初代の姫が言っていた力、それがこれなんだ。



力が大き過ぎて、自分でコントロール出来なかった。
「あー…広がっちゃったなぁ」

刺青が肩まで広がっている。

その時突然周りの闇が歪み始めた。

「…何!?」

そこに立っていたのは先程南条くんと戦っていた敵対ファミリーが私を囲んでいた。

突然Aが私の首に掴みかかってきた。

「返せ…」

「な…にを…」

首を絞められているせいで上手く言葉を発することもできない。

「お前が…お前が殺した…俺達の命を返せ!」

「!?」


そうか…全てが合致した。
あの力は敵を気絶させるものではなく敵を絶命させるもの。

全てを無に帰す力。


私が…私が殺した?

私が?こんなに人を?

「い、や…」

認めたくない…

「お前は、人間じゃない…!
化け物だ!
こんなに人を殺したんだからな」

Aの腕の力が一層強くなる。

「や、やめ…」

息が…出来ない。

目の前が霞んではっきりと見えないけど、Aは笑っている。

本当に私は一人だったら何にもできないんだな…

恭弥さん…ごめんなさい。
いっぱい迷惑かけて…

もう一度あなたに会いたい。


薄れゆく意識の中、私が見たものは恭弥さんの顔だった。

会いたい、会いたい!


その瞬間私は光の球心体を作り出し、A達は消えた。
「ゴホっ!」

一度に大量の酸素が肺の中に流れこんだため、むせてしまった。


私が…私があんなに人を…
「い、や…いやぁ!!」

やだ。認めたくない。

でも、これは事実だろう。
私はショックのあまり、またそこで気を失った。

あのマフィアの会合からもう、一週間以上になる。

一向に天音は目を覚まそうとしない。

あの時の…、二年前天音が初代姫に会った日の僕の夢が現実となってしまった。

「ねぇ、目覚ましてよ…」
意識のない天音に話し掛けても、反応が帰ってくるわけではない。

それは頭では分かっていた。分かっていたけど、どうしても心がそのことを否定していた。

「ねぇ…いつも見たいに笑ってよ…」

どうして反応しない?
目開けてよ?
僕のこと嫌いになった?

…どうしてこんな事になった?

どうして…


何かを深く考えるように恭弥は黙ってじっと天音を見つめた後、部屋を出た。




それから恭弥は天音に近づくことはなかった。


***

「おい、ツナ」

リボーンが少し呆れた様にこっちを向いて話しかけてきた。

「何?どうしたの?」

「……雲雀の様子が異常な程おかしい。
任務には一応支障はないが、殺さないでいい敵まで皆殺しだ。
これじゃ、相手マフィアの情報すら掴めねぇ。」

「…天音ちゃんか…」

「アイツ、この頃天音に近づこうともしねぇ。
長期任務ばっかり取るし、財団の仕事も外で、帰りは夜中だ。
…たまに女の匂いがプンプンするしな。」

リボーンが嘲笑うように言葉を吐き出した。

あれから、天音ちゃんは目を覚まさない。

シャルマにも診てもらったが、あの男でもお手上げらしい。
原因が分からないから手の施し様がないのだ。

「…薫は?」

そういえば、彼の姿も数日見ていない。

「南条のヤツは誰かと違って天音に付きっきりだ。
…天音がああなったのは、自分のせいだと思ってやがる。
まぁ状況的に仕方ねぇがな。」

「…。
本国の姫から連絡があったよ。…全部夢で見たって。あれは、力を調節出来なかった天音ちゃん自身の問題だって。
雲雀さんと薫にも伝えたいけど、その様子じゃ二人とも聞いてくれそうもないね。」


ツナはため息をついた。

***

目の前には眠っている天音がいる。

あの日の光景が瞼の裏にいつもあった。

「ごめんな、天音…」

自分さえ強ければこんな惨事を招かなかった。

全ては自分の弱さ故。

母の事を言われて動揺していたのかもしれない。

天音は力の反動のためか、ここ2,3日熱でうなされていた。

俺は横にある解熱剤を手にとって、口に含んだ。

(ごめんな、天音。
今は…我慢してくれ。)

薫は水と共に、薬を天音の口に移した。

「天音!!」

一瞬辺りが黒い光に包まれ、何が起こったか分からなかったが、目の前で俺を殺そうとしていたAが倒れた。
Aだけではない、他の奴らも倒れていた。

俺は慌てて天音に近づき、意識を確認した。

「おい!天音!」

息はしているが、抱きかかえても、返事がない。

「!!」

ボンゴレの姫の象徴である、棘の刺青がどんどん広がっていく。

ヤバイ…、これ以上刺青が広がれば天音は命を落とす事になりかねない。

(頼む…、止まってくれ!)
そう願いながら俺は天音の腕を強く握った。


***

あの黒い光が放たれた後、戦っていた敵が次々と倒れていった。

「…?」

「おそらく、先程の光が原因かと…。」

敵は皆、息をしていなかった。

すると、耳の無線機から、沢田の声がした。

「雲雀さん。こっちの敵も全滅です。
おそらく、あの光は天音のモノかと…」

「!!」

嫌な予感がした。
急いで、奥の広間に向かった。



***

「おい!天音!」

そこにはぐったりとした天音と、天音を支えている南条がいた。

「…天音!」

やはり沢田の言った通り、天音の光だったらしい。

でも、あんな光り方をしたのは初めてだったから、断定はできなかった。

断定ができたのは、天音をアジトに運んで、南条から話を聞いた時だった。