毎年たくさんの子どもたちが小学校へ入学し、事前の説明や発育の状態を知ってもらうために就学時健康診断を受診します。元々は医療を充分に受けられなかった時代に、新入学児を対象におこなわれていました。ですから自治体には実施が義務付けられていますが、受診の義務はありません。社会が豊かになり塾や個別学習が盛んになるにつれて、いつしか就学時健康診断は能力優先のとくに障害をもった子どもたちを地域の学校から引き離すための関所のような位置付けに変わってしまいました。
私たちは障害があるなしにかかわらず地域でともに生きていこうという思いで、1986年目黒区鷹番にオープンスペース柿のたねを開設して活動を続けてきました。この25年の間にノーマライゼーションという考え方が少しずつ広まり、バリアフリーという言葉が日常的に使われるようになって駅や公共施設にはエレベーターや多目的トイレが整備されてきました。まだまだ充分とはとても言えませんが、少子高齢化社会を迎えるにあたり、みんながいっしょに生きる世の中に変わろうとしています。
しかし一方で学校はいまだにスロープさえないところが多く、エレベーターを設置している学校はほとんどありません。そこら中が段差だらけです。今年3月の大震災ではたくさんの人が被災し避難所生活を強いられましたが避難所の多くは学校が利用されます。けれど残念なことにいまの学校は誰もが受け入れられる施設にはなっていません。
社会に出るための準備期間として子どもたちが集団生活を体験していく学校はいわば社会の縮図でもあります。その貴重な成育の過程で子どもたちはいっしょに学び育つ機会を奪われているのです。それは障害を持った子どもだけのことではなく、健常児といわれる子どもたちにとっても同様の問題なのです。 今年5歳になる私の息子も再来年には新入生になります。彼と一つ下の娘はとても小さな頃から障害をもった私の友人知人たちと当たり前のように接してきました。地方出身の私自身は高校を卒業するまで障害をもった友人がほとんどいませんでした。出会いすらありませんでした。いまとても自然につきあっている彼らを見ていると私はこういう機会を奪われてきたんだなとあらためて感じます。
世界の流れはインクルーシブ教育が基本!
2006年12月に障害者権利条約が採択され、日本政府も2007年9月に署名し国内法整備が進められてきました。そして今年障害者基本法が衆参両議院で可決され、8月5日公布・施行されました。その中で障害の定義は個人の問題(医学的モデル)ではなく社会的障壁によって障害の有無や軽重が決まる(社会的モデル)という考え方が初めて反映されました。そして地域社会における共生をうたい、社会的障壁に対してそれを除去するための合理的配慮がなされなければならないと明記されています。そして教育においては障害の有無にかかわらず共に学ぶインクルーシブ教育を基本として、本人とその保護者の意向を尊重しなければならないと明文化されています。
子どもを地域の小学校に入れたいけれど、入学に際しての不安がある方、就学時健康診断に疑問をお持ちの方、教育相談という形で教育委員会から呼び出しや説得を受けて困っていらっしゃる方、その他どんなことでも、一人で悩まないで。
いっしょに考えていきましょう。