家庭画報(ひろみの愛読雑誌)で各地の名旅館を紹介していた。京都だったら、俵屋、炭屋、柊屋。インターネットで調べたら一泊二食3万円(から)でも、柊屋には別館があることが発覚。そこなら一泊1万5千円。
次の家庭画報をみたら、今度は新しいお店のトピックスに、「よねむら」を発見。シェフ(?)の創作料理で、和風でも洋風でもない料理。写真がめちゃくちゃおいしそー。
美容院でみた雑誌に関西おいしいところ特集があった。京都の町屋風喫茶店。すてきだった。
そうだ、京都へ行こう。
これは、運命かも。
ぴろみの妄想暴走私小説。          注意 これはすべてノンフィクションです。
南禅寺
京都駅から地下鉄で、南禅寺へ向かう。蹴上駅から徒歩5分。参道は木々が茂って涼しそうだけど、涼しくない。最初からばてばてのわたし。ねえ、そんなカッコで暑くない?マサヒコに聞く。北海道出身の彼は暑さに弱いはずだ。でも、どうしようもないじゃん。って彼はとても我慢強い。いつも文句の多いひろみの相手を、辛抱強くしてくれる、とってもいいひと。
やっとの思いで三門にたどりつく。急な階段をのぼるとすごい!見晴らしがいい。ここは、石川五右衛門が上って絶景かな!って言ったところだそうです。地上22m。ぐるっと1周できる。確かに高くて見晴らしがいい。あいにくの曇り空で、遠くのほうは霞んでいるけど。緑がすごくきれい。
夏の京都も捨てたもんじゃないよね。
南禅寺の方丈庭園は、枯山水、小堀遠州作。ひろみの趣味のひとつに、お庭をみる、というのがあります。別に造詣が深いというわけではない。ただ、いかにも、手が込んでいる、工夫がされている、美しい、手入れがされている、ということに感動したいだけなの。とりあえず、小堀遠州とか、ネームバリューに弱いわたし。
ひとりお寺の縁に腰掛けていると、なんだかこころ落ち着くのは日本人だから?などとわたしの口からでるのはおかしい?笑わないで、もう。
ちいさな敷地だけど、大きな世界。木のありよう、石のありよう、が、何を表しているかわからないけれど好き。そう思わない??げらげら笑うマサヒコくん。
渡り廊下を通るとき、目に鮮やかな百日紅の花。今の季節、木に咲く花は珍しいね、と彼は言った。
水路閣
南禅寺の裏手にある水路閣。まわりは木々が生い茂り、うっそうとした感じ。レンガづくりのアーチがお寺の境内とは思えない雰囲気でなんか不思議。明治時代に、琵琶湖疏水から水道をひいてきた、それの名残り。いまでも水は通っているのだ。彼は木の枝にカメラをすえつける工夫をしてセルフタイマーで、二人の記念写真を撮った。
八坂神社
次の目的地は八坂神社、予定ではもよりのバス停まで歩いて、バスで移動、のはずだったけど、あまりの暑さで、タクシーにしようよー、と楽なほうに流れるわたし。
ここまでは地下鉄だったので、今日はじめて見る京都のまち。前はいつ来た?高校の修学旅行以来だよ。へー北海道も京都なんだ。南禅寺は来たの?ううん、初めてだよ。
車窓から見た栗田小学校はどう見ても日本家屋で門が閉まっている。すごいよー、栗田小学校、そこで運転手さんにめちゃくちゃ大きい声で粟田です(京なまり)と指摘されてしまった。西の下に米はあわ、西の下に木が栗どっせ。
タクシー降りてから、おまえ、字も読めないと思われたんだよ。ばかかこいつ、とか。
だって、目が悪いんだもん。しょーがないじゃん、もう。
八坂神社は朱塗りの門に朱塗りの本堂。ありがたみがあるのか、ないのか。(だって建立当時は朱塗りだったんだろうけど、なんか色が落ちて、木の古びた感じのほうが重みがあると思わない?)
お賽銭は払わないが、二人の幸せと、彼の勝利を願った。
よねむら
お昼どきになりました。通りをくだって「よねむら」を探す。途中、人力車のおにいさんに声かけられる。ねえ、カップルで思い出づくりにどお?えー、これから食事なんですう。まだ、早いじゃない、いいよー。うーん、もう予約してあるの、ごめんなさい。
おまえは、ちょっといい男だとそっち行くんだからー。だってかっこよかったんだもん。でもあなたのほうがすてきよー。
「よねむら」は美濃幸のとなり、と聞いていたのになかなか見つけられなかった。
間口がとっても狭い。なかは細長い、町屋をきれいに改装してあってモダンなカウンターがだーっと一列。白と黒の制服できめているお店の人はみんな若い。それになんだか人数が多いけど、もくもくと自分の持ち場をこなしてるって感じ。
一番奥の席に通されて、そこから見えるちいさな壷庭がかわいい。和なのか洋なのか?とりあえずビール。冷たい、うまいっ。
ランチはコースで最低5千円。最初は冷たい、おちょこにはいったもの、つるんと飲んでください、との注釈つきで。じゅん菜とシャーベットがはいっていて冷たい。
それから、どんどん出てくるんです。冷たいかぼちゃのスープ、あゆの唐揚、パン、はも、冷製パスタ(そうめん?)、茶碗蒸し、フィレステーキ、ごはんとお漬物、お味噌汁、デザートには紅茶のプリンとキャラメルのアイスクリーム、コーヒー。
おなかいっぱい、午前中汗を流してやせたかもしれないのは全て水の泡かも。パンとパスタとご飯がでてくるのは変だよねえ。こんなに食べちゃうと、空も飛べなくなっちゃうかしら。みんな減量してるのに。
そんなこと気にしないマサヒコは、きれいなおねえさんが運んできてくれると喜ぶんだもん、もう。そういえば、係長が、あいつは女好きだー、といっていたのを思い出した。ほんとなの??
お店を出たらもう2時でした。2時間も食べつづけたのね。
高台寺
次の目的地、高台寺へは徒歩ですぐ。最近整備されたという「ねねの道」を通る。でもなんか、きれいすぎてかえって情緒がないっていうか。新しくってありがたみがない。
高台寺掌美術館はすごく冷房がきいていて涼しかった。
圓徳院はねね終焉の地。でも改修したのでとってもきれいで新しい。襖の絵は新進気鋭の画家に描いてもらったそうだ。松竹梅、とか雪月花とかわかりやすいテーマをわかりやすい筆致で描いている。お庭は、南禅寺に比べ豪快な感じでした。向こうが静かな海とすると、こっちは波がざぶーんと来そうな荒れた海。お庭に一人旅の女の子の姿あり。名所旧跡に興味があるのか、京都ではすごく多い。ひとりでもさみしくないよ。ひろみだって、いつもそうだもん。
高台寺は、まがりなりにも、茶道を志す者にとっては有名なところ。高台寺蒔絵、というものがある。普段は質素な炉縁を、お正月は、豪華にいろどる。そんな記憶がある。
お茶室が、いくつかある。傘亭と時雨亭。こういう名前のつけ方が、風流人だよね。
おりしも、雨があたってきた。傘がないわたしたち。傘亭は、たぶん、いつもは非公開なのだろう。係のおにいさんが待機している。でも、雨にやられて困っているわたしたちを中にいれてくれた。そう、とてもラッキー。傘亭の名前の由来は、中をみれば一目瞭然、天井張りが、傘を広げたかのよう。庭園、というよりは、東山の一部になっている、竹林はとてもりっぱなもの。竹には勢いが感じられる。どこまでもまっすぐに、天を目指していて。
清水寺と
地主神社
清水寺。何度も行ったことあるけど、二年坂、三年坂を通って行ったことはない。道の両側には清水焼や、民芸物なんかを扱うお店が立ち並ぶ。「坂」は下りなのかと思ってたけど、上りでした。二年坂で転ぶと2年後に死ぬらしい。すでに暑さと、足が痛いので(きどってサンダルなんか履いてくるからだー)へろへろなわたし。マサヒコはさりげなく手をつないでくれる。
高山にも、こんなところがあったよね。うん。
それはふたりで共有する思い出のひとつ。
清水寺の山門は、なんと工事中で幕がかかっている。オフシーズンの悲しさよ。
でも、気を取り直して胎内めぐり。こんなのあったのだ。善光寺みたい。真っ暗で何も見えない。頼りになるのは、左手につかんだ綱と、右手につかんだあなたのシャツのすそ。
しばらく行くと光る何かに出会った。これがそうなの?あとでもらったものを読んだら、「ハラ」という字らしい。(ねえ、ここに落書きしちゃう?つぎたして、ダサンジョウ、とか、ばちあたり!!)
それから、・・・・・ 
恋の神様、地主神社。いかにも、高校生が修学旅行で来そうなところ。でもやっぱり行かなくちゃ。ねえ、あなたは何を願ったの?笑っているだけのマサヒコ。
おみくじは大吉だったよ。
恋の石。奥の石から手前の石まで目をつむってたどりつけたら、恋が成就するという。うーん?
清水の舞台。さすがに混んでますね。遠くのほうまで緑が見渡せる。やはり、紅葉の時期は…と、思わずにいられない。
六道珍皇寺
今日最後の目的地は六道珍皇寺。徒歩で簡単に行ける距離、と思ったわたしがばかでした。さっきと違い、下りには違いないけど、辺りは閑静な住宅街、人通りも少ない。ひろみを勇気づけてくれたものは、途中で会った大きいうしねこちゃん、とてもひとなつこくて、うるさかった。
そして、住宅の間の小路から垣間見えた、八坂の塔。イタリアのフィレンツェでも同じことがあったのですよ。小路を歩いていると、突然現れるドゥオモのクーポラ。
やっとの思いでたどりついた六道珍皇寺は、とってもにぎやか。屋台なんて出ちゃって、お祭りみたい。もうすぐお盆が近いので、六道参り、というやつをするらしい。あの世とこの世の境、「六道が辻」がここにある。
栗本薫の小説「大導寺家の滅亡」はここが舞台と思われる。「あの世との境」の石碑の写真でも撮らなくちゃ、という野望に燃えてきたわたし。
なのになのに。
お花やら線香やらを売る出店に占拠され、石碑の前は物置と化していました。ひどい。
六道まいりは、なかなかに興味深いものでした。長野のお盆とは違う。お花は、蓮の花。お線香というよりも、高野槙を供える。売り手の口上も、「まき、いりませんかー」という。なんとも言えない情緒をかもしだしていて。さて、そういうグッズを買い整えて、お寺の周りにとりあえず行列する。中で、どんなセレモニーがあるのかは、わかりませんでした。体験してみるべきだった?
柊屋別館
何度も言うように、へとへとのひろみは、またしても、タクシーをゲットしてしまいました。行く前は歩くつもりでいたのにね。しかし、結構遠かったよ。ま、鴨川をふたりで夕涼みがてら歩くのもよかったかもしれないけど。(でも涼しくなんてないんだよーーー)
柊屋別館まで、と運転手さんに告げると、別館ですね、と念を押された。そりゃあ、本館の方がよかったけど。でもでも、別館でもたいそう風情のある旅館でした。
タクシーでたどり着いたのは、われながらかっこよかったかも。だってちゃんと建物の前には、番頭さん(ベルボーイか?)が待機していてお出迎えしてくれたもの。そこへ、へろへろになって歩いてくるんじゃ情けない。
 
つづく。このあと、信じられない出来事が!!(って別にいいんだけどさ)
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