シンガポールのTanah Merah Ferry Terminalから船に乗ってインドネシアのビンタン島へ向かう。
国境を跨ぐので、
空港と同じようなパスポートコントロールがあり、
荷物検査をしてゲートへ入る。
パスポートコントロールの後、
ゲート前にも小さな食堂があるので、
朝食を食べながら待つ事にする。
何だか分からない麺を食べるが、
やっぱり甘くて、
そして美味しくない。
でももったいないから全部残さず食べる。
これから向かうビンタン島のゴルフクラブはリゾート地と言うこともあり、
インドネシアでありながらも物価が高いと言うことなので、
船に乗り込む前にduty freeでアルコール類を調達する。
しかし、制限があるため、そんなに買えない。
1人で買えるのは、
ビールなら350ml缶が3本だけ。
ワイン、ウイスキー、ジン、
リキュールなどの750mlのボトルなら、1人1本しか買えない。
品揃えは程々あって、
梅酒や日本酒もあった。
買えるだけのアルコール類を抱えて船に乗り込む。このシンガポール海峡には常に数え切れないほどのタンカーが集結する。
そんな、島とも見紛う程に巨大なタンカーの間を進み、約1時間ほどでビンタン島へ着いた。
民族衣装を着た踊り子達がゆるいダンスで歓迎してくれる。
今回はこちらに泊まる。
一番小さいヴィラで3LDK。
人数がいれば、こちらの方がホテルの部屋より安くつく。
すぐにでもラウンドへ出たいところだが、
その前に昼食をとる。
シンガポールで食べたどのご飯物より美味しい。
「ナシゴレン美味しいねえ、もぐもぐ、
シンガポールの食べ物は、あれは、もぐもぐ、
あれは一体なんだったのかねえ、、もぐもぐ、、」
そんな事を話しながらのんびり昼食を食べていると、
突然ひやりとした空気をのせた一陣の風がびゅうと吹き、ナシゴレンを食べる匙を持つ手を止める。
遠くから稲光を纏った漆黒の雲が、ゆらりゆらりと形を変えながらこちらに迫ってくるのが見えた。
「もぐもぐ、うーん、これは降るねぇ、、、」
「こっちに来なきゃ良いけど、どう考えてもこっちに向かってきてるよねぇ、、、」
匙を握り締めたまま空を仰ぐ我々の心配を他所に、
生き物の様に蠢くその雲はみるみるうちに膨らんでゆき、まるで半紙に滲みゆく墨汁の様に空を覆い始めた。
そして、
ごろごろごろ〜、、、と、重々しい重低音で雷鳴が轟いたかと思うと、
パリパリパリー、、、ガガーン!
今までに聞いたことがない、
空気を引き裂いて天空を破かんばかりの烈々たる雷鳴と共に、激流を束ねた大滝の様な雨が降り注ぐ。
激しく大地に打ち付けるその水の大群は、悠然とたなびく巨大なカーテンとなって辺りを包み込み、つい先刻まで見えていた青空と、緑緑しい一面翠緑のゴルフコースを、あっという間に見渡す限りの白い情景に塗り替えていく。
到着早々、
早速熱帯雨林気候の洗礼を受けた。
もしあの時、
ナシゴレンを食べずに、
すぐにラウンドへ出ていたらと思うと恐ろしい。
しかし、ここまで盛大に振ってくれると、
むしろ清々しさを覚える。
衰える気配の無い雨をしばらく眺めて、
一幕の観劇を終えた様な気分でテーブルに向き直ると、ずっと匙を握り締めていたことに気付いた。
匙を持ち直し、もうすっかり冷めて冷たくなったナシゴレンをすくう。
「いやあ、とうとう降ったねぇ」
降り頻る雨を横目に見ながら、観念したかの様に言葉を漏らした。
「セントアンドリュースでもバンコクでも晴天だったし、この前の日本の時なんて、台風でさえ逸れて晴れたんだけどねえ」
僕はここ数年、
自他共に認める奇跡の晴れ男としてその功績には定評があった。
毎回何処へ行っても、
天気予報に関わらず晴れに恵まれてきていたのだが、
今回ばかりはいかんせんこの雨だ、
晴れ男記録も流石にこれまでかと思いつつ、
ナシゴレンの最後の一口を口に運んだ。
先程までのあの土砂降りが嘘のように止んで虹がかかる。
こうして今回も晴れ男を立証する事となったのだった。
そして、そのジャングルには毒蛇をはじめとした様々な野生動物が生息しているので、その中にボールが入ってしまったら、探しに行く事すら出来ない。
このビンタン島でゴルフをする時に注意しなければならないのが、
蚊。
虫除けさえしておけば良いのだが、
日本の虫除けは、蚊の種類が違う為あまり効果がない。
虫除けは現地の物を使う必要があるので、
ホテルやクラブハウスで聞いてみると良いだろう。
夜はホテルで夕食。
シンガポールで食べた何よりも美味しい。
湿度も無くて過ごしやすい。
昔からインドネシアの友人達に、
インドネシアは良いよ、と聞かされていたが、
納得だ。
ドバイとは別に、
シンガポール辺りにもう一つ拠点があったら良いなー、などと思っていたが、
シンガポールは食べ物微妙だし、
物価も高いから、
インドネシアとか、
あとマレーシアなんか良いかもしれない。