弟を追ってスイスへ
こんなナチュラルな国際交流↑に
喜んでいたら…
ふと…スイスでの経験が
よみがえった。
20年前。
料理人の弟が
国内コンクールで優勝し
副賞としてスイスへの
研修切符を手にした時のことです…。
超がつくほど
英語の苦手な弟。
オーストラリアへの新婚旅行が
唯一の海外旅行で
ハロー。サンキュー。
ぐらいしか話せない。
そんな弟が
単身渡欧するって!?
それは驚きだったし
それはそれは
恐ろしいことだった。
外国語に埋め尽くされた
空港、駅、街…
渡航に不慣れなアジア人への
冷たい視線…
完全に周囲から浮いて…
コミュニケーションがとれずに
孤立する姿…
そんな光景がパパパパッと
フラッシュのように
脳裏に浮かび
不安に駆られた。
実家の両親だって
おんなじ反応だ。
「〇〇が海外!?」
「ウソでしょう???」
「大丈夫か??」
栄誉の喜びより
不安が上だ。
まさに天変地異。
落雷に打たれたーっ
天から魚が降って来たーっ
ってくらいの衝撃…だった。
ウソでしょ??を
何度も言って
ホントだよ!!と
何度も言われて
ようやく現実のこと
なのだと理解した。
ちょっとだけ英語ができて
ちょっとだけ海外事情に
詳しかったわたし。
弟にも理解できそうな
やさしい英会話の本を探したり
渡航に必要な情報を得たり。
弟を追って
私もスイスに行かねば
と使命感さえ
芽生えたりして…。
そんな弟がスイスへ経ち
数日してから
国際電話が入った。
待ってました!!
「大丈夫だよ」という弟。
しかし…
その声がなんとなく沈んでいる…
ような気がした。
安心させようとしたんじゃ…
ほんとは辛いんじゃ…
帰りたいんじゃ…
余計な心配が募り
早く私が行って
弟が馴染めるように
取り計らわなければ
そんな強い使命感に
駆られたのだった。
はやる気持ちを抑え
弟が発って1か月後。
ようやくスイスに降り立った。
雪降る極寒のスイス。
ルツェルンの湖畔近く
丘の上に建つ由々しきホテルに
弟は働いていた。
レセプションで弟の親族で
あることを告げたら
その場にいたスタッフが
素敵な笑顔を見せた。
告げる前からにこやかだったかも。
○○の…よ!!って好奇のような目で
ふかふかの絨毯のロビーで
弟が来るのを待ち
ディナー会場前の広場で
談笑している
絢爛な装いの紳士淑女たちを
見ていた。
観光もする予定で
友人とふたり。
格式高い雰囲気の
ホテルのロビーで。
そこの一体どこから
おちゃらけた弟が来るのか
不思議だった。
これまで真面目な姿を
見せてこなかった姉弟。
だからちょっと…
気恥ずかしくもある。
レセプションのスタッフの
優しい雰囲気のおかげで
不安は薄れていた。
きっと弟は元気だって。
すると
「いらっしゃいませ」
聞いたことのある声が。
顔を上げると…
そこに弟が立っていた。
真っ白なコックコート
パリッと格調高く着こなして
半ば胸を張るように立っている。
なんだか…
眩しいじゃないか…
勤務中であるし
私は友人を連れているから
いわば外面な弟、なわけだけど…
あまりに社会人で
あまりに立派な姿で…
ちょっと感動してしまった
高校卒業とともに
一人暮らしを始めた弟とは
一緒に生活した時間が短い。
だからか…
その頃から弟の印象は
あまり変化していない。
英語嫌いの弟。
一生海外とは無縁と思えた弟が
外国の地にいるフシギ…。
日本でさえ滅多に会わない弟と
こんな遠い外国の地で
再会を果たしているフシギ…。
こうして弟を目の前にして
これは夢か??
と思ってしまった。
ディナー会場へ行くと
私たちはVIP対応された。
女性ディレクターを始め
サービススタッフ総出で
目配り気配りしてくれる
お料理も美味しく
お酒も美味しく。
スタッフみなさんの
笑顔が素敵で。
海外の地でこんなにも
優しい笑顔に出逢うなんて
ちっとも想像して
いなかった。
男性奏者のピアノ演奏があり
日本からのお客様に…と
「桜」の演奏がなされた。
めっちゃおもてなし
されてるじゃん…
気恥ずかしくもあり…
素敵な時間だった。
翌日の午後は歓迎会。
お酒を飲みながら
ビリヤードやダーツ
テーブルゲームに興じて。
そこで弟は…
私なんかよりも
同僚と
しきりにしゃべっていた
もちろん流暢な英語ではない。
カタコトだ。
言いたい単語が出てこないから
身振り手振りがやたら激しい。
それでいて
私になんか助けを
求めようとはしないのだ。
言葉に詰まって
ん~~~………
って頭を傾げて考えて
あ~…あ~…
なんて言いながら。
それでも相手の目から
目を離さずに
思いを伝えようと
必死に食らいついている。
その一生懸命な姿に
なんだか…心打たれた。
相手も呆れている
わけじゃなさそうで。
なんとか絞り出そうとする
弟の言葉を、
辛抱強く待ってくれている。
~って言いたいの?
ってヒントを投げかけた時に
「それそれ」
って弟が言うと
ふたり一緒になって笑って
めちゃくちゃ楽しそうだった。
逆に私が不甲斐なかった…
弟を助けるために
やって来たっていうのに
そんな場面もなければ
逆に厚くもてなされている。
姉として礼節をもって
接しなければ
という使命感から
つい硬いセリフしか
出てこなかったし
日本人の変なクセ…頭でっかちで融通が利かない。
とても楽しそうにしている
弟を見ていると…
彼が英語ができないことを
まるまる受け入れて
それでいて相手に
素直にぶつかっているのが
よく分かった。
そんな素直な人間を
誰が嫌いになるだろう。
誰が放って置くだろう。
心配など不要だった
弟はどこでもそうやって
場に馴染んでしまうのだ。
私の持って行った
あんこ入りの和菓子を
美味しいねってみんなで
言い合って食べた。
「彼はNICE GUYだね」
ってべた褒めされて
その後、
おススメのお店まで
車で送り届けてくれた。
なんかすご~く
幸せな時間だった。
そして気づかされた。
気取ってたってダメ
素直な気持ちで挑まなきゃって。
相手のことを知りたい
自分のことを伝えたい
学ぶ姿勢があるんだ
そういう気持ちを
ちゃんと伝えようとすれば
その想いはちゃんと
相手に伝わるって。
あれから20年。
今では弟は料理長だ。
ホテルの要として。
スイスのドイツ語圏で修行して
ドイツ語を分かるようになり
フランス人のシェフに付いて
フレンチを学ぶうちに
フランス語を分かるようになり…
場所が変われば…
覚えた言葉をすっかり
忘れているけれど
なんにしても。
わが弟の適応能力の高さ
に完敗したわけです。
海外旅行に何度も
行ってるからって
先輩風吹かせて…
しかしそこで
見たのは弟の勇姿
弟を慕う現地の
仲間たちの姿だった。
電車での国際交流があり
その時の感触が
かつての記憶とリンクした。
コミュニケーションの師に
ちょっと近づけたかな?
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