London 2012 Festival/ワールド・シェイクスピア・フェスティバル正式招聘作品
彩の国シェイクスピア・シリーズ第25弾
『シンベリン』
さいたま芸術劇場 大ホール 18:30開演
演出/芸術監督
■蜷川幸雄
CAST
■阿部 寛 = ポステュマス
(紳士。シンベリンの養子、シンベリンのひとり娘イノジェンと結婚し追放される。ヤーキモーがイノジェンを誘惑したと偽ると、彼女を殺すよう命じる)
■大竹しのぶ = イノジェン
(シンベリンのひとり娘で先妻の子。ヤーキモーとクロートンの誘惑を拒否したが、夫ポステュマスから不義を非難される。「フィデーリ」という少年に変装する)
■窪塚洋介 = ヤーキモー
(イタリア人、フィラーリオの友人。イノジェンを誘惑しようとし失敗、ポステュマスには彼女をものにしたと信じ込ませる)
■勝村政信 = クロートン
(王妃の先夫の息子。イノジェンに拒絶され、復讐することを決める)
■浦井健治 = ギデリアス
(シンベリン王の第一王子。幼時にベラリアスに誘拐され「ポリドー」と名付けられる。育ての親モーガンを実父と思っている)
■瑳川哲朗 = ベラリアス
(20年前にシンベリンの宮廷から不当な追放をされた貴族。報復としてシンベリンの二人の幼い息子を誘拐し、自分は「モーガン」と名乗る)
■吉田鋼太郎 = シンベリン
(ブリテン王。一人娘イノジェンがポステュマスと無断で結婚したことに怒り、ポステュマスを国から追放する)
■鳳 蘭 = 王妃
(シンベリンの後妻。息子のクロートンがイノジェンと結婚する事を望み彼を王にしようと企てる)
■大石継太 = ピザーニオ
(ポステュマスの召使い)
■丸山智己 = カイアス・ルーシアス
(ローマ軍の将軍)
■川口覚 = アーヴィレイガス
(シンベリンの第二王子。カドウォルと名づけられた)
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。
ネタバレあります…
まず、お芝居が始まる前からの様子にビックリ!
開演10分前に私が座席についたときには、ほとんどの役者さんが舞台に出てらして、5分前には阿部さんや大竹さん窪塚さん等々も全員舞台上にいらっしゃったんです。
そういえば、THE・ガジラの「どん底」では、病気の役の方が開演前から横になっていたし、「金閣寺」でも、開演前に全員舞台の定位置についてらっしゃったので、幕が開く前に役者さんが舞台に出ていらっしゃることには、そうビックリはしませんが(「金閣寺」では、ちょうどスタジオライフの舞台で、最後に全員が定位置につき遠くを見るようなポージングで締めくくるのを、最初に行ってから、セットを移動させながら袖にはける人、舞台上に残る人とそれぞれの動きがあって、芝居が始まりました)、今回は、舞台に出ている状況がお芝居そのものの導入では無く、これから舞台に上がる役者さんたちの集まりとして見せているところに、「へぇ~~~~!」こんな見せ方もアリなんやぁって思いました。
舞台にあるのは、「シンベリン」のセットでは無く、鏡がずら~っと並ぶ楽屋そのものなんですもん。
鏡にはそれぞれ、阿部 寛、川口 覚、という名前が貼り付けられていて、その前に腰掛け、周りの人と話をしたり、鏡を熱心に覗き込んでいる方や、メイクさんらしき人に直しをされている方、将棋を打つ方々と、さながら本当の楽屋の様子そのもの。
ただ、役者さんは全員 某番組のマネキン○○のようなマントで身を包んでいるので、その下がどんな様子なのかはわからない状態です。
そして、始まりと同時に全員 阿部さんをセンターに舞台前方 一列にずらっと並んだんです。まるでカーテンコールの時のように…。そこで、それは見事に一斉にバサッとマントが外され、それぞれの役柄の衣装に身を包んだ役者さんたちが、これまた一斉に深々と一礼し、(楽屋セットは袖に片付けられ)舞台後方にはけるという演出に、観客一同「おぉ~っ!」という歓声が上がったくらいです。
当然わたしも声にならないくらいの大きさで「おぉ~っ!」と口にしてましたが、演出に度肝を抜かれたのと同時に、ポステュマスの衣装の阿部さんのあまりのカッコ良さに、目を見開いた状態になってしまいました(笑)
阿部さんだけやなく、窪塚さんにせよ、丸山さんにせよ、マントから一転 舞台衣装に変身するのは、それだけですっごくカッコよくて、誰でもきっと一瞬にして心を持って行かれますよ。ほんま、蜷川マジックってすごい!って思いました。
ストーリーそのものも、すっごく良かったです。ご都合主義と言われようと、こういう大団円を迎えるお話 大好きです。
そしてトラジコメディと言うそうですが、全体の流れは悲劇のはずなのに、ふとしたところに喜劇が混在していて、最後にはとてつもないハッピーエンドを迎えるという不思議な感覚。
例えば、イノジェンが、少年になりすまして、誤解をしている夫ポステュマスに会いに出かけた先で、ポステュマスの衣服を身に着けた首なし死体(実はポリドーに殺されたクロートン)に嘆き悲しむシーン。消沈するイノジェンが首なし死体を枕に寝てしまうと、そこかしこに笑いが洩れる、という感じ。
途中で殺されてしまったクロートンはクロートンで、お馬鹿な後妻の連れ子という役柄から、登場から殺されるまで、笑いを独り占めしているくらいのおかしさにあふれていて、勝村さん やってくれるやないの!って関西人の血が騒ぎましたよ(笑)
キャスティングがそれぞれのキャラクターにうまく合致していて、裏切られることが全く無かったです。
大竹しのぶさんが公演プログラムで、「…イノジェンも若さゆえのまっすぐさに溢れています。(年齢的にはちょっと無理があるかなと思いますが…)・・・」などとおっしゃられていますが、全然そんなことありませんもん。
可愛らしく貞淑で真っ直ぐなイノジェンそのものでしたから。少年に変装後も違和感無く、少し笑いも取りつつのフィデーリがとてもキュートでした。
阿部さんも苦悩するポステュマスそのもので、すごく素敵でした。以前観た「道元の冒険」では、セリフも多くなく、動きも制限されているような役柄で、阿部さんの良さが生かされておらず、もったいないように思いましたが、今回は、阿部さんにピッタリで、とても素敵でした。
他の方々もみなさん本当に素敵でしたし、丸山さんがローマ軍の将軍という重要な役どころで、とってもカッコよかったのが、姜くんだけでなく、キューブ全体を応援したい私としては嬉しかったです。
蜷川さんのお芝居では、その舞台美術にもいつも心奪われるのですが、今回もすごいなぁ・・・と感心しました。
重厚感あふれるオオカミ像(私は観ていませんが、「タイタス・アンドロニカス」等いくつかの舞台でも使用されているようです)
ジャポネスクな巨大な襖絵(ブリテンを追放されたポステュマスが、ローマの友人フィラーリオの館でヤーモキーたちと自国の女自慢をし合うシーンでは、「源氏物語」における「雨夜の品定め」のイメージを重ねたとのこと)
鷲に乗って降臨するジュピター(ジュピターはローマ神話における全能の神ユピテル(ギリシャ神話ではゼウス))
転換の仕方も、セットの動きというか流れがスムーズで美しいので、舞台に引き込まれた気持ちが、一瞬覚めてしまうようなことが無かったです。
これまで観劇した蜷川さんの舞台って、わたし的には当たり外れがあるんですが(笑)、この作品はストーリー、出演者、演出すべてストライクゾーンで、すっごく良かったですね。