叱り方~小雪の場合~ | 自然の力はプライスレス

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まりんとの生活っぷりなどなど。

私は犬を叱ってはいけないとは思わない。
時と場合によっては、心底震えるような叱り方も必要だとは思う。
だが、それは生涯に何度も有ってはいけない。
ここぞという時に効果的に使わないとただの虐待だ。


訓練所で一緒の小雪。イエローラブの女の子。
パワフルで意志の強そうな目をしている。
体格も良く、血筋の良さをうかがわせる。

彼女は一日に2度、それぞれが10分足らずの訓練以外ではケージ待機だ。

今日も、ようやく訓練の順番が小雪に回って来た。
最初は隠れた人達を探しているようだったが、何周かしているうちに、柵の外に脱走した。
恒例のアルカトラズ脱出劇。

川を見下ろしながら気持ち良さそうに土手を走り、拾い食いをしているところを捕まってしまった。
何度となく繰り返される人間と小雪のおっかけっこ。

小雪は救助犬認定試験を合格している。
日頃は地面の匂い嗅ぎも禁止されている。
拾い食いの習慣も有ろうはずも無い。
厳しく育てられている3歳の女の子だ。

それなのに。。。それなのにこの有り様。。。

まりんのトレーナーは言った。
ト「あーぁ、お散歩になっちゃってるね。」
私「ええ、訓練のたびにこんな感じです。 まりんもそうだけど、閉じ込めっぱなしが悪い方に作用するタイプなんです。そう伝えているんだけど、分かってもらえなくて。。。」
ト「かわいそーに。。。」


捕り物帳劇の次は伏臥と待て。

何かの動きに誘われて小雪が立ち上がり、小雪ママが怒鳴った。「コラーー、小雪、伏臥!!」
ハッとした小雪は伏せたのだが、小雪ママは、次に変な動きをしないように黙って睨み続けた。
人間の心の中では、そうだ、動くなよ、と言っているのだが、小雪はじっとしていられず、また動いたので、叱られてケージにしまわれた。

一部始終を見ていたまりんのトレーナーが小声で私に言った。
ト「何が起こっているか分かる?」
私「何というと?」
ト「小雪は怒られたから伏せし直したのよ。その後何も言われなかったから、あれ、違うのかなと不安になって別の事をしようと動いたの。
私「はぁ。。。なるほど。。。」
ト「小雪は怒られてばかりで、言う事を聞いた時は無言。これじゃぁ、混乱するばかりで悪循環よね。可哀想に。」

大人が子供にもそういう態度で接しているのを多々見掛ける。
子供達は、上手くそんな大人の目を盗んで裏をかく様になるではないか。
犬もそれと一緒だ。

四六時中、ガミガミ言い続ける人の言葉にはだんだん慣れてしまう。
あーー、また何か言ってるよ。早くおわんねーかな。まったく、キャーキャー煩いばかりで何言ってんだかさっぱりわかんねーよ。

だんだん、中高の男子校生みたいな態度になる。

その態度にイライラする人間はさらに締め付けようとする。

すると、犬は、もうこの人には頼れない、仕方ない、自分で自由を掴むしかないか、そんな風に考えるようになり、隙を見て脱走して逃げ回るのだ。

うちの子は頭が良いとか、ずる賢いとか、全然言うこと聞かないよ、と思っている人へ。

そう、頭が良い犬ほど、人間なんかが考えるより先の先を見越している。
退屈だ、何かしたい、と色々やりたいことを考えている犬と、次から次に後手後手の駄目出しをする人間とでは、見る先が違う。
そんな手順では、永遠に気持ちは通じ合えっこ無い。