"ねぇねぇっ…見て見てっ撩パーパっ。"
新聞を読んでたが、嬉しそうに声をかけた娘の方へ目を向けた。
俺は見て驚いた…普段ドレスなど着ないアシャン。夢ちゃんの演奏会以来、まったく着る機会なかったからか久しぶりに飾る姿に、しばし見惚れてしまった…。それに…。
"アシャン、お前それ…。"
"うん。もう暑くなってきたから、
今ね衣替えしてたの。クローゼットの奥の方から、何か箱のようなものがあったから出して見たら…出てきたんだっ。"
フっ…懐かしいな。あのとき、香にプレゼントしたドレスじゃねぇか。
あれは…俺が香にプロポーズした後、
数日後、依頼にパーティがあったから贈ったものだ。いつもまでも居てくれたパートナー殿の感謝の意を込めて。
そしてこれからも俺の見えるところで、俺の側から離れないでくれと、
ちょっと心の気持ちを込めた、精一杯の気持ちだ。
俺が選んだ、お前らしいドレス。
初めは、かなり胸元辺りまで見えるからこんなの着ていくのが恥ずかしいっ。なんて
すごく顔を蒸気させながら言ってたが、それでもちゃんとそれを、着てくれたっけな。
奴らに見せるのは本当は気に入らなかったが、俺のために着てくれてるのが……。懐かしいときもあったもんだ。
"懐かしい物を出したな、アシャン。
それは俺が唯一、香にプレゼントできたドレスだ。あいつにそれを着せたら真っ赤になって…怒ってたんだがな。
…お前は大丈夫なんだな。"
"へぇー。そうなんだっ。まぁ確かに恥ずかしがり屋のマーマだから、こんな肩出したら、外にも出歩けなそう。"
そういうアシャンもなんだか、下を向いてはしゃぎながらドレスの裾を揺らしている。…嬉しそうだな。
確かドレスはあの日以来、香が恥ずかしがって着ることはなかった。
…てっきりこのドレスも、見ることはないんだろなと思っていたが、
大事にしまってくれていたんだな。
そのドレスはあのときのまま。
シワ.染み一つない変わらない。変わったところは深みがより出てきたところだな。まぁ、アシャンには少し大人すぎるがな。
"ねぇ?パーパ?
これ、わたしにも似合ってるかな?"
ふと何気なく、嬉しそうに娘が聞いてきたので俺は満面の笑みで、
"そりゃあ、もちろんっ。ちょっと孫子にも衣装だが、それで十分大人の女性には見えるぞっ。"
"もうっ。撩パーパったら!孫子にも衣装って!それ、少しけなしてないっ?!私だってこれでも二十歳の大人ですっ!もう子どもじゃあないんだからっ!"
俺の冗談に、蒸気して怒ってしまった。…あはは…ヤレヤレ。そんなに怒らなくても。
…そんなわけないだろ。香に似ている娘のお前が。ただえさえ美人なのに親子揃って、俺が選んだ物が似合うなんて。褒めるほうも二人いるんだから、結構苦労がいるんだぜ?
娘の親って、こんな苦労があるんだな。
でも、そのドレスを見れたからには
一つお願いしてみよう…
"…あぁ、すまんすまん。
なぁ、アシャン。お願いがあるんだが…、両手広げながら、まわってくれないか?…こんな感じに。…ッッタァンってな。"
"両手を広げて?こんな感じ?
結構難しいしいね。…誰が考えたの?"
"…違う、違う。もっと大きく。"
その踊り方を随分真剣に取り組んでる娘を、俺は懐かしさを感じて見つめていた。
俺が見せたのは、嬉しいそうに喜ぶあいつが偶然できたターン。その姿は誰にも似つかわない輝きを放っていた。
この俺でも、勝てなかった。
"もう十分似てきているよな、お前に。"
と小さな声でつぶやきながら、一生懸命俺のを真似ようとしている、娘を見ていた。
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