心の痛み
体の傷なら
癒せはするが
心の傷では
癒せはしないと
歌った人がいたが
母は
体中に管をつながれて
排尿も排便も全自動で
体の痛みはモルヒネで抑え
食事は点滴で
もう
怖いものなし
のはずなのに
時間が来るとおしっこといい
うんちのときは歯を食いしばっていきみ
お腹空いたとわめき
どこが痛いのか
痛い痛いと喚き
最新の医療も
母の心の痛みには叶わなかった
白い病室の天井を指さして
虫がいる虫がいると叫び
気持ち悪いと泣く
もう
何もしなくていい
自然のままでいいと
あれほど願ったのに
病院の都合
人手不足の緩和
なきまどう母の手足を抑えつけ
これが
20年前の医療だった
母の痛みは
心の痛み
心が痛いと泣いていた
モルヒネを打っても抑えられない痛みなら
そのまま
何もしないでおけばよかった
死ぬときは
何もできない
餓死さえも
許されない
まな板の鯉のように
命預けます
そんなむごい治療を
しないで
そのまま
そっとしておいてほしかった
