自分が苦しい時は相手も苦しい | リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論

リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論

マニアの隠れ家を目指します。
中津の生渇きの臭い人はお断り。

題名は浜田さんが解説のときに良く言うフレーズですが、まさに浜田さんだからこそ言うことが出来る金言だと思います。

効率性が重視され、根性論・精神論はパワハラと置き換えられてしまい昭和の遺物と化してしまいましたが、諦めないということで最後の最後のせめぎ合いで勝敗を分けるのはまさにこの部分ではないかということを先日の力石が証明してくれました。

海外というシチュエーションでポイントをリードされて倒す以外に勝ち筋が無い展開でそこから逆転KOというのは一番劇的ですが、それだけに滅多に観れるものではありません。

それだけにそういう試合を魅せてくれた選手は記録以上にファンの記憶に残ることも多いです。

 

1.力石政法(緑)vsマイケル・マグネッシ(イタリア)

まさにここ何年かで一番の逆転劇。日本側のプロモーターがアレだし、リングサイズの問題もあって試合前からいろいろありました。マグネッシにポイント・リードされた展開で11Rの逆襲、倒さねばそれでも勝てないという中でストップを呼び込んでの勝利はお見事。この階級の王者はどこを見ても怪物、難物揃いで一筋縄ではいかないが、力石には頑張って欲しいな。

願わくば3150以外のリングで。

 

2.中谷正義(帝拳)vsフェリックス・ヴェルデホ(プエルトリコ)

ロペスに敗れて、一度は引退を表明した中谷が帝拳に移籍しての第一戦。コロナ禍がまだまだあったので海外で試合をすることになったのだが、いきなり1Rと4Rにダウンを奪われてしまい、大ピンチに。観てる側は単純に「やべぇよ、やべぇよ。」とラウンドを重ねる毎に焦っていましたが(笑)

9Rにタイミングの良い左ジャブでダウン奪い逆転KO勝ちしたときは歓喜しました。まさに最後の最後まであきらめず、最後を救ったのは左。左を制するものは・・・の格言が染みた試合。

 

3.三浦隆司(帝拳)vsミゲール・ローマン(メキシコ)

 

三浦のボンバーが最大級に炸裂した試合。

WBCのSフェザー級王者だったミゲール・ベルチェルトへの挑戦者決定戦というシチュエーションでした。バルガスに前年王座を奪われた三浦がそのバルガスに勝ったベルチェルトへの挑戦を目指すための1戦というわけですが、これが大苦戦。

ポイント・リードされて迎えた最終回、本田会長の思いっきりやってこいという発言に喚起されたか、抉る様なボディでダウン奪っての逆転KO勝ち。

パンチがある選手はやはりこういう逆境に有利だが、それでも勝ち筋を引っ張ってくるには「持って」なければダメだということを感じさせた1戦。

 

4.サムエル・セラノ(プエルトリコ)vs上原康恒(協栄)

 

これは1980年の試合ですが、この時代のSフェザー(Jrライト)は今以上に世界の壁が高く険しかったのですよ。日本人キラーとして名を馳せたセラノは余裕の展開で5Rまでほぼフルマーク。

この日の興行のメインはこの試合の前に行われたクエバスvsハーンズなので所謂、客出しで混雑を避けるための試合順。

そのためか客席は空席が目立ち、実況も緩み気味。明らかに挑戦者を揶揄する様な実況・解説でしたが、6R、先代の金平会長の「好きな様にやってこい」という言葉に贈られた上原の右がセラノの顎を捉えての鮮やかなワンパン逆転KO。

実況席のOH!MY GOD!みたいな雰囲気になったことは痛快ですらありましたね。

苦しい状況下でも決して試合をあきらめずに呼び込む、逆転のKO劇はボクシングの、格闘技の醍醐味です。

そして時代を超えてもその様な試合は何代も語り継がれていくことになるでしょう。