失踪した外猫のクロが帰って来た。
失踪から1か月以上経ったある日外で煙草を吸っていた嫁はんがブラックレイディー(クロの我が家での本名)が来てると言う。
どれどれと見に行くと確かにクロだ。
内猫昇格後の凱旋訪問かと思ったが、そうではないことは一目で解った。
がりがりに痩せていたのだ。
クロは避妊手術をしていないとはいえ、雌猫だ。
オスならメスを追いかけて遠くまで遠征するということもあるが、自分から遠くに行くことは考えられない。
となると失踪の原因はひとつしか考えられない。
マイケルと同様野良猫狩りに捕まったのだろう。
クロは慎重な猫なので大丈夫だろうと思っていたのだが、甘かったようだ。
そして、捕まって業者の拠点に連れていかれた後で、なんとかして脱走したのだろう。
クロは細身で敏捷な猫なので、太った首無しマイケルよりはチャンスはある。
恐らくは市の委託業者なので、距離は遠くても15キロ程度だろうが、それにしてもよく帰って来たものだ。
犬の帰巣能力は素晴らしいが、猫は大したことないと聞く。
それでもたまにものすごい距離を旅して戻って来ることもあるようだ。
どこを通って行ったか分からない所から帰ってこれるのはまったく不思議だ。
クロは優れたハンターで、一時は我が家の庭に毎日のように雀の死骸が転がっていたほどだ。
あたしも一度現場を目撃したが、見事なものだった。
それでも十分なほどは食べられなかったのだろう。
早速餌を足してやったが、匂いは嗅ぐ物の食べようとはしない。
かなり時間が経ってから少しだけ食べた。
人間でも断食後は重湯からリハビリが必要なので、猫もすぐにはまともに食べられないのだろう。
今はもうすっかり復調して例によって「みゃうーん」と鳴いて餌を催促する。
帰ってしばらくはやたらとかわいい声で鳴きまくった。
やたらとすりすりしてくる。
きっと寂しかったのだろう。
これからきっとまた出産などでやっかいをかけてくれると思うが、それでも今はただ嬉しい。
お帰り、クロ!