『利を以って合(がつ)する者は、窮禍患害(きゅうかかんがい)に迫られて相棄(あいす)つ』

―以利合者、迫窮禍患害相棄也―

 


 

 <荘子>

利害関係で結ばれた者は、苦境や困難に直面すると、たちまち相手を見棄ててしまうのだという。

その逆はどうか。『荘子』はこう語っている。

 

「天を以って属する者は、窮禍患害に迫られて相収(あいおさ)む」

 

「天を以って属する者」とは、わかりやすく言えば、深い信頼関係で結ばれた者である。

そういう場合は、苦境や苦難に陥ると、かえって親身になって助け合うというのだという。

 

これまた真理と言ってよい。

 

われわれは多面的な交友関係の中で生活しており、利害関係で結ばれているケースも少なくない。それが悪だというわけではないが、こういうものだということは、はっきり認識しておいたほうがよいだろう。そうすれば、相手に余計な心理的負担を強いることもないし、こちらで対応を誤まることもない。いざと言うとき、頼りにならないものを頼りにするのは、もっとも拙劣な処世なのである。

 

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  守屋 洋 (著)
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『明主のその臣を導制する所は二柄のみ』

―明主之導制其臣、二柄而已矣―


 

<韓非子>

「導制」は、コントロールする、使いこなす。「二柄」は、二つの柄(ハンドル)。したがって、すぐれたトップは二つの柄を握っているだけで部下を使いこなす。という意味になる。では、「二つの柄」とは何か。『韓非子』によればこうである。

 

「二つの柄とは、刑と徳である。では、刑徳とは、何か?刑とは罰を加えること、徳とは賞を与えることだ。部下というのは罰を恐れ賞を喜ぶのが常である。だから、トップが罰と賞の二つの権限を握っていれば、ふるえあがらせたり、てなづけたりして、思いのままにあやつることができる」

 

信賞必罰で臨むこと、これが部下を使いこなす鍵だ、というのである。

 

『韓非子』はさらに、つぎのようにダメを押している。

「殺されたり、実権を失ったトップは、賞罰の権限を二つとも部下に奪われていた。こんな状態で身を滅ぼさなかったトップは、昔から一人もいたためしがないのである」

 

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『寛とは苛急を為さざるのみ、簡とは繁砕(はんさい)を為さざるのみ』

―寛者不為苛急耳、簡者不為繁砕耳―

 

 

<宋名臣言行録>

宋代の欧陽脩(おうようしゅう)という政治家は各地の地方長官を歴任したが、業績とか評判にとらわれないで、もっぱら「寛」と「簡」による行政を心掛けた。それでいて、問題の多い地方に就任しても、半月もしないうちに問題の大半が片付き、一、二ヶ月もすると、役所はなにもやることがなくなって僧房のように静かになったといわれる。

 

ある者が不思議に思って、

 

「公の政治は寛簡を旨としながら、それでいてよく治まるのは、なぜでしょうか」

 

と訊ねたところ、欧陽脩は表題のことばをあげて答えたという。

 

「わたしの心掛けている寛とは、苛酷な押し付けをしないこと(苛急を為さざるのみ)、簡とは煩雑なたらい回しをしないこと(繁砕を為さざるのみ)、これに尽きますよ」

 

「寛」と「簡」は組織管理のポイントである。そういう意味で、欧陽脩のこのことばは参考になるであろう。

 

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