「あっ、いたいた(笑)詩衣奈さん^^」
いつものように明るく声をかける海野君は、
私を名字から名前で呼ぶようになっていた
私はいつもなら笑顔で返すはずの言葉が、
今日はつまって出てこない
心配そうに見つめる海野君に、私は、
心の中で『心配しないで』と言うことしかできなかった
ずっとうつむいていた私がふと顔を上げると
海野君は複雑そうな表情を見せた
今までに見たこともないような、どこか悲しい顔
二人の間に流れるくらい沈黙・・・
私は必死に声を発した
かすれた聞き取れないくらい小さな音
「あの、、、ごめん。私、、さっきお母さんに会って、、、それで、、、、、」
涙がこぼれた
何の涙かも分からない不思議な・・・
次から次へ流れる涙
止めようとしても止まらない
胸がグッと苦しくなって、足が震えた
すると突然、涙の道が途切れた
顔を上げると複雑そうな顔は変わっていない海野君が目の前に立っていた
そしてその指が、私の涙の道を止めていた
「詩衣奈さん。俺、詩衣奈さんが笑顔じゃないとつらい。
何があったのかはっきりは分かんないけど、、、
もっと俺を頼って?俺じゃ頼りないかもしれないけど、ずっと味方でいるから」
そして君は、私の頭を優しくなでた
「海野君、私ね・・・お母さんが怖いの。
私を産んで後悔してるって言われたことがあって・・・・・・・・
お姉ちゃんとか弟とかに見せる笑顔は私にはなかったんだ。
だから海野君と話せた時、すごく温かくなった。
私、そんな海野君に、絶対迷惑かけてるよね・・・」
今までずっと心に閉じ込めてた思い
誰にも言えなくて泣いていた思いがスッと出た
私の話を聞いていた海野君は何も言わなかった
でも、一瞬深くうつむいて、顔を上げたときの顔は
ものすごく笑顔だった
そしていきなり私を抱きしめた
えっ!、、、何!?
「ごめんね、詩衣奈さん、、、今だけでいいから
こうさせて」
私は何がなんだか分かんなかったけど
今はこうさせてあげたい、こうしたいと思った
海野君・・・実は泣いてなかった?
ばれないようにしてたかもしれないけど、息が変わってたよ
だんだん強くなる海野君の力にちょっと苦しかったけど
これで海野君が楽になれるならこれくらい
我慢しようと思った