ふと、台風のような酷い天気が過ぎ去った日に行ったドライブを思い出す。
 あの日、なんとなく目指して入ったご飯を食べるところで、
 彼は残した竜田揚げを申し訳なさそうに眺めていた。
 
 私は私で自分の分すら食べきっておらず、
 他の人の分までかまってはいられなかったけれど、
 それにしても、彼はずっと申し訳なさそうな表情のまま座っていた。

 彼は、好き嫌いが激しい。
 私の言葉で言わせてもらえば、
 偏食ではなく変食だと思う。

 例えば、お刺身にありったけのわさびをのせること。
 例えば、クリーム系の味が嫌いなこと。
 例えば、某コーヒーショップのアイスラテを飲むこと。
 (このお店はアイスコーヒーに牛乳を混ぜているので私は納得しない)
 例えば、極端に野菜を避けたがること。
 例えば、狂ったように一味唐辛子をかけること。
 
 彼の食に対する好み(と言うより、食べたいか食べたくないか)は、
 話を聞くと「母親が作らなかった」とか「母親が嫌いだった」とか、そんな理由。

 これは、きっとよく言われることなんだろうけれども、
 母親の作る料理によって子供の味覚が決まると言うことだろう。

 でも、もういいかげん大人なんだからたまには野菜も食べてみてよ、と少し思う。

 1つのお皿をシェアする場合、
 そしてその中に野菜があった場合、
 たいていは、私のお皿にやってくる。

 そうすると私は野菜を食べなくては、と意味もなく責任を感じてしまい、
 結局メインのお肉やお魚は、食べかけのまま彼のお皿に行くことになる。

 汐留のビルのレストランで、
 隅田川を目下にしたテーブルで、そんなことをしたものだった。