風邪は良くならない。
でも、1日1日と小さくは良くなっている気がする。

その風邪が残していったもの。
欲望を少し取り払った胃。
幾つかの風邪薬。
買ってもらったスウェット。
チョコミントのアイス。
寒さに鋭くなった体。
熱のぼんやりで見たその人。
消えない咳。

先日、彼と歩いていて、
「食べないからだ」と私の風邪を言った。
食べない、というより、食べなくてはいけないと思えないし、
そう思うのが辛い。
お昼はたいてい食事をするし、
お昼が遅かったり消化していない感じがない限り、夜だって食事をする。

だけれど、どうしても自分に一生懸命になれない。
「一人で食べるのはつまらないから」
そう答えるのが、精一杯だった。

じゃあ、この人は何を食べているのだろう。

「パスタ、ラーメン、パスタ、ラーメン、時間がないから。」

私は、平日のその人の生活を驚くほど知らないのだと、それに驚いた。
知らないというよりも、
夜ご飯をたくさんいろんなものを食べるのに、
お昼はそうなんだぁと、なんだか言葉を吸収していた。

食べる事。

拒食とか、そういった類いではない。
ただ、よく言う胃が小さくなったという事なんだと思う。

一昨日は、はんぺんを食べて、もうそれで良いと思った。
1杯のビール、グラスの底が、遥か彼方に見えた。

ビールって、こんなに大変な飲み物だったかしら。

極端に食べていないわけではないので、やせたりはしていないと思うし、
それは確信を持てるけれど、
食べない事は、死にゆく人を思い出させる。

食べられなくなって、たくさんの管が体に通っていて、
管が取り外されて、微笑みながら眠ってしまった人。
私の何かを分けて、それでまた目を開けてくれたらいいと思った。

そしたら、私はたくさん食べるだろう。
食べたいとか食べたくないとか、そんな事にとらわれず、
その人のために、分けてあげられるように、元気になろう、と。

自覚や責任感が足りないと言われたら、それまで。
だけど、自分のために一生懸命になれない。
そう思っているだけだと思うし、
明日は、ものすごい量の食事をするかもしれない。

風邪を引いてから、そんな事を考えた。