その人は、ベランダで風を感じ、
そのベランダに少し見覚えがある私は、
迷いなくその人のところへ向かう。

少し大きめの窓の向こうに、
夜空とその人がいた。

オフの日。
めずらしく出かけない日。

窓の向こうに広がる空気。
「何をしているの?」
「毎日、この時間は出来るだけ、風にあたるようにしているんだ。」

ただじっとベランダにいる彼の背中めがけて、
静かに歩いた。

背中。
私の好きな背中。

その人の、知らなかった日常を、
少しだけ知ることが出来たような感じがして、
うれしくて、
お腹にまわした手に、
力が入ってしまう。

今年はあと何回、
そうやって過ごす事が出来るかしら。

そうして、穏やかな時間を。