ロックフェスに初めて行ったのは10年ほど前。
解放感たっぷりの野外フェス。
音が空を突き破る。
熱唱が響き渡る、雲ひとつない晴天。
好きなバンド目がけて雪崩のような混雑した列に
必死に食らいついてゆく。
フェスティバル一色の激しい空気に酔ってゆく。
「これ好き!!」ってだけで周りはみんな一瞬で仲間のような意識に。
思いが音楽、リズム一つでつながる瞬間のあの気持ちよさ。
周囲が笑顔だらけ。たまらない。
こんな素敵な時間、そうそう日常では味わえない。
初めての野外フェスで、初めて見るバンドに少しでも
近づこうとして急激に突進した私は
盛り上がりの最高潮でとんでもない大失敗!!
気がつくと何百人もが後ろに迫る最前列で
完全に押しだされていた。
ノリ過ぎて気がつかなかった。
我にかえると急に苦しくなってきた。
脱出できずに押され続けてもがいている私を、
逞しさ満ち溢れる夏男なお兄さんに抱きかかえられて
すくい上げられて抱っこされながら救護室へ…
あーーーーー情けない![]()
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今でもまだ後悔の嵐。
最後まで聴けなかった。もったいないことをした![]()
でも
そのお兄さんはカッコよかった。
20歳なりたての私を、
ライブフェスを堪能する術も知らない小娘を、
当時流行った厚底サンダルなんて履いてくるバカ女を、
落ち着くまで隣で心配そうな顔でただ見守っていた。
(ただ、他に救護する人がいなくて暇だったのかもしれないが…)
とりあえず最前列で聴こえていた曲が終わる頃、
目が覚めた。
ほんの数分間気を失っていた。
アホすぎる。
こんなことで気を失うなんて…
お兄さんがポカリスェットを持って待っている。
「目覚めた…?大丈夫…?これ、飲んだ方がいい…よ?」
恐る恐る私に話かけるお兄さん。
一体私はどんな表情をしていたのか想像もつかない。
「音楽フェス初めてでしょ?きっと」
…とイキな質問をしてくるお兄さん。
痛いとこつくなぁ。と軽い頭痛をこらえながら
「はい。そーです。」…と開き直った。
実は初めてじゃないように振る舞っていたバカすぎる私。
「結構激しいトコあるからなぁ。
気をつけないと自分の一番好きなバンドまで持たないぞ」
(あーあ。わかってるって!!言ってくれるな、そんなこと。
ちょっと始めからテンションあげすぎただけじゃん。)
そう思いながらも、ちょっとだけ音楽フェスの醍醐味なんか
聞き出して、一人で納得する始末。
そのうち友達が駆け付けた。
大笑いされた。
「あんたさー。羨ましいポジションまでいけたんだから
もっと楽しまないとー。何その病人ぶり!!」
(へいへい…私が悪うございますよー)
恥ずかしさから友達にはヘラヘラ笑ってみせて、
悔しいからお兄さんには回復したようにみせるため
履いてきたGパンの裾をひざ下から破り捨てた。
ちょうど膝がボロボロだったのだ。
「よっしゃ!!言われた通り、堪能したやるからなー
」
ありがとう…と心で呟いて会釈した。
負けず嫌いの私はちょっとだけ、かっこつけてみた。
お兄さんは白い歯を見せてガッツポーズを出した。
次に目指すバンドをどれにするか友達と
相変わらずキャーキャー言いながら相談していた時、
私はこっそりと友達が持ってきていた予備のスニーカーを
借りれるか聞いてみた。
「バカだねー。何でサンダル?」と言われながら、
友達の足サイズとあまり変わらなくて良かったと思った私。
あらためて準備万端で再決行!
連日のロックフェスはまだまだ始まったばかり。
暑い夏!
これぞ究極の夏の思い出!
最近久しぶりに会った友達はそんな思い出話をしながら
今年梯子したロックフェスの数々を私にまくしたてた。
30歳近くになる友達が
10年前と変わらず音楽に熱くなるその感覚に少し妬いた。
もうフェスには行ける歳じゃないなぁ…と思っていた私は
友達のその、10年前と変わらない笑顔に
少しの勇気をもらった。