タイトル。フランス語のハエ。女性名詞。
ハエは女性のようにしつこい、と覚えた。
先日、フライトから戻り、アパルトマンに帰宅した時のこと。
8月なので、夕方7時なんてまるで真っ昼間の明るさ。
玄関を入ると、まずシャッターが閉まった状態の真っ暗なリビングがある。
入ったとき、なんか変な匂いがした。そして、変な気配も感じた。
あれ?
その奥にキッチン。
西陽が強烈に当たる部屋、猛暑の数日を締め切ったまま留守にしているのだから、
まぁ、定期的に除菌してるとはいえ、排水溝の臭いがしても不思議ではない。
でも、なんか、直感で違うものを感じた。
リビングは防犯目的からいつも窓のシャッターを閉めていくので、部屋の中は
暗かったのだけど、キッチンの窓にはシャッターがないので、明るい光が入っていた。
リビングのシャッターは降りたままの、暗いリビングからキッチンに入ると、
真っ白なキッチンの壁に数匹、いや数十匹のコバエがじっと私を見ていた・・・・
真夏に仕事から戻っても、コバエがいたことはなかったのに。
おかしい・・・・
キッチンのゴミ箱は空。そして、この匂いはなんだ?
その時、突然記憶が蘇り、フライトに出た日の朝を思い出した。
「バナナの皮!!!!!!!」
原因を確信しても、現実直視するのが怖くて、リビングを明るくできない私。
そのまま、そーーーーーっとリビングのゴミ箱に近寄る。
大量に感じる、何億匹とも言えるコバエの気配。(本人はそう感じた)
フライトに出かけた日の朝、バナナを食べ、ゴミ箱に捨てた。
いつもちゃんと、そのゴミ袋をキッチンから地下に直通してるゴミシューターから
捨ててから仕事に行くのに、今回は忘れて行ったらしい・・・・。
忘れて行ったらしい・・・なんていう一言では済まされない、
おぞましい事態が起きてしまった・・・
リビングはまだ、見るのが怖くて、暗いまま。
でもその時、キッチンから入った光が、リビングの一角に入り、
黒いビニール袋が入ったゴミ箱がはっきり見えた。
びっしりと居座る何億匹(私にはそう感じた)とも言える大量のコバエ・・・・
不幸中の幸いで、ビニール袋が黒色でよかった・・・
コバエが突然変異で白色にならなくてよかった・・・
もう、もう、もう、小さい黒い点々の集団が、自分の周りを飛び回る・・・のを感じた。
私が帰ってきただけで、奴らのこの騒ぎ。
ここで慌ててシャッターをリモコン操作して、直射の西陽がリビングに入り込んだら、
大慌てする奴らの声が聞こえてきそうだった。
なので、まずは暗い中で、ゴミ箱に入ってる黒いビニール袋の口を
そーーーーーーーっと締めて、キッチンのゴミシューターから捨てる。
それでもちろん終わりではなく。
ここで、緊張の一瞬。
やっとシャッターをリモコンで上にあげる決意・・・。
静かにシャッターが上がり、西陽全開、眩しい白い壁のリビングに、
びっしりと居座る外野席のコバエたち。
もう、泣きそうになった。
フライトで死にそうに疲れているのに、制服着たままコバエ処理。
でも、待ったなしの対応、頑張らないといけなかった。
リビングの窓は畳2枚分ぐらいの大きな窓。そこを開けて、「出てってーーーー」と
言いながら、団扇で誘導する・・・・。
窓は開けっ放しにすると、コバエの親戚や友達が「何かあったのか」と
様子を見に来る恐れがあるので、ある程度数が減ったと思ったら、
少しだけ開けて、窓の外に出てもらえるように、誘導した。
2時間ほど経過、まだ制服のまま。
外に誘導するという優しい私にも限界があり、あとは、パシ・・・パシ・・・と
申し訳ないけど、安定したうちわのスマッシュで殺傷行為が続く。
その日は夜中までパシ・・・パシ・・・と家の中でうちわスマッシュ音が響き渡った。
悪夢から4日が経過しても、まだ毎日数十匹のコバエをうちわで叩いている。
正直、辛かった・・・・。申し訳なかった・・・。
でも、同居は無理と思った。
それからしばらく、隠れていたコバエ達は、勝手に繁殖したのか、
なかなか姿を消さず、しつこかった。
ハエを女性名詞と決めた人、よくわかっている。
それから数週間たっても、まだ、コバエがいる生活が続いた。
基本的に私のキッチンにはコバエがいない生活なので、耐え難い時間ではあったが、
そもそもバナナの皮という、コバエの親戚一同が集まってしまうような、
豪華な食事を放置して留守にした私が悪い。
これに懲りて、「フライトの日の朝は、絶対にバナナを食べない」というルールができた。
