受付のお姉さんをさんざん煩わせてしまい

自分はとんでもないことをしてしまったのかなと

申し訳なさに心が縮こまった

 

この後先生にどうやって話そうか

懸命に考えようとしたが

なんだかうまく頭が働かなかった

 

それから程なく診察室に通してもらうことができた

 

会いたかった先生を目の前にして

一気に緊張が高まった

 

先生は私のMRI画像をじっと見ていた

難しい顔をして少し憂鬱そうにも見えた

 

私は自分の気持ちや考えをぶつけないよう

先生に聞かれた質問のみ答える事に気を付けた

 

ただ、どうしても水泳の事だけは伝えたかった

生涯水泳を続けたいんです

いまチームに入って

みんなで試合に出ようって話していて・・・

 

先生は少しニコッとして

「おー、すごいね」

「種目は?」と聞いてくださった

 

S1も定まっていない状況の私は答えに窮したが

「全種目しっかり泳げるようになりたいです」と

無理やり答えてみた

 

「平泳ぎがねー」

「平泳ぎは普通に泳いでいても

 半月板ケガする人多いから」

「手術すると長期間泳げなくなりますよー」

 

 

そこまで言ったあと

一気にMRI画像の解説をしてくださった

 

 

右膝は

内側半月板がここにあって

外側半月板はこういう向きで切れてしまっている

前十字靭帯はここまであるけれど

この位置から先はこういう風に断裂している

後十字靭帯はちゃんとあるけれど

おそらく間に挟まれてしまってるんじゃないかな

そして軟骨はここにあってこういう形なんだけど

このあたりが欠けてしまっているね

 

左膝は

(この病院で撮った)5年前の画像だけれど

左は靭帯しっかりしている

このあたりの筋肉が炎症を起こしていたね

内部のこの辺りに水が溜まっていそう

ガングリオンも出来ていたんじゃないかな

でも5年経っているから

いまはもっと進行しているかもしれない・・・

 

先生は各部位の位置や役割の説明も交えながら

スラスラと話してくれた

 

いままで聞いたことの無い懇切丁寧な説明で

私はとても感動した

 

 

先生は説明の終わりにサラッと言った

 

「で、どっちからやります?」

「一度に両膝やってもいいけど

 ひとりでトイレに行けなくなっちゃうんだよね」

 

私は

左膝も手術が必要だったの!?

と一気に血の気が引いたが

なんとか平静を装って

「じゃあ右からで」と答えた

 

その場で右膝のACLと半月板の手術が決まった

 

11泊12日だから会社とおうちでよく相談して

希望時期を決めてきてくださいとのことだった

ここまで生活できたんだから

急ぎじゃなくても大丈夫だと思いますよ

とも言ってくださった

 

 

私はホッとして拍子抜けしてしまった

医師が違うだけで

これほどまで診断に差があるのかとも思った

 

 

別れ際、

前の病院で半月板も軟骨もないから

手術やる意味ないって言われちゃったんです

もうダメなのかなと思ってました

本当にありがとうございます

と言いながら私は席を立った

 

それまで先生は終始穏やかに

淡々と話してくれていたけれど

その時だけは冷徹な目が鋭く光ったように感じた

「人にはいろんな考え方がありますから」

 

私はうっかり先生に惚れてしまいそうになった