主人公の成瀬がとてもかわいい。うんとても。

それはアイドル的なかわいさではなく、しいて言うならば、

ひらてゆりなちゃんみたいなかわいさ。

成瀬はいつもたんたんとしている。そして、思ったことを

着実に実行している。学生の思ったことなんて大したことはない

のだけれど、例えばM1グランプリに出たい。例えば、近所の

デパート閉店まで毎日通いたい。そんなことを実行していく。

また、髪の毛は実際どのくらい伸びるのか実験すると、

ある日丸坊主にする。女の子。

だから友達はあんまりいない。でもすごく楽しそう。

そんな子があるとき気持ちを動かされる初めての体験をして

それをつたないコトバで周囲に伝えていく。まさに

成瀬の第一歩。葬送のフリーレンみたいに最近は割と

たんたんとしている物語が見やすいのかもしれない。

テレビで大げさな反応を見る我々は少しそれに疲れてきたのかも

しれない。そして世の中が動きすぎているから、たんたんとしたものに

惹かれるのかもしれない。

そうだな最近辻村さんとか気持ちの機微を書いて書いてこちらが、

追いつめられるくらいの描き方をするのを読んできた。

そこを通ってきたからの新鮮さ。また今っぽさ。小説にも流行りが

あるんだなーと改めて思う。