澤3得点でメキシコに快勝、なでしこジャパン決勝トーナメント進出 グループリーグ第2戦(vsメキシコ)
マッチレポート
なでしこジャパン日本女子代表チームは7月1日、ワールドカップ・ドイツ大会グループステージ第2戦でメキシコを4-0で退けてB組2位以内を確保。1995年大会以来となる決勝トーナメント進出を決めた。

主将でMF澤穂希はハットトリックを達成して国際Aマッチ通算78得点をマーク。68年メキシコオリンピック得点王にもなった、元日本代表FW釜本邦茂の75得点を抜いて、男女歴代1位の記録を塗り替えた。また、この試合のMVPに選ばれた。

この日、ニュージーランドに2-1の逆転勝ちをしたイングランドが勝ち点4になり、2連勝の日本は2差をつけてB組首位をキープ。7月5日のイングランドとのグループステージ最終戦に勝つか引分ければ、同組1位通過でベスト8進出する。
日本は立ち上がりから精力的に動いて、中盤で相手を圧倒した。前線からプレッシャーをかけて相手の自由を奪い、中盤で囲い込んでボールを奪うと、素早い切り替えで攻撃に転じて相手ゴールに迫る波状攻撃を見せた。
前半13分には、FW安藤が左サイドで相手2人に倒されてFKに。MF宮間がゴール前にピンポイントのボールを送り、澤が頭で合わせて先制。通算169試合目で釜本氏の記録を抜いた。
その2分後には、DF岩清水からのフィードを受けたFW永里がMF大野へパス。大野は身軽なステップワークで相手2人を交わして、ペナルティボックス端から今大会初ゴールを叩きこんだ。

2-0リードで試合の主導権を握った日本は、その後も流れるような動きとパスで攻撃を仕掛けて多くのチャンスを作り、前半39分には宮間の左CKに、澤がニアに走り込んでヘディングで後ろに流して3-0とした。
後半開始4分に、メキシコFWベロニカ・ペレスにミドルシュートを打たれるが、GK海堀が右手1本でこれをセービング。その後もよい反応を示して、無失点に貢献した。

なでしこジャパンはその後も攻撃の手を緩めず、後半11分、12分には永里のシュートと宮間のCKで立て続けにゴール枠を叩く場面も。永里は、前半43分のオフサイドとして取り消されたゴールを含めて、何度となく相手ゴールを脅かした。
後半80分には、パスワークからDF近賀がオーバーラップ。途中出場のFW岩渕と右サイドで1-2を展開してゴール前へ折り返しのボールを送ると、中央に入り込んだ澤が右足で合わせて相手ネットを揺らし、日本代表では2001年12月以来となるハットトリックを達成した。
その3分後にMF宇津木と交代してベンチに下がったが、2万人を超えるレバークーゼンのスタジアムを埋めた観客からはスタンディングオベーションを受けた。

内容、得点共に充実した展開を見せたなでしこのプレーに、佐々木則夫・日本女子代表監督は「相手が波に乗って力を出す前に、攻撃も守備も選手たちががんばってくれた。特に前半は、なでしこのサッカーが表現できた。その結果の勝利だった」と、選手のハードワークを賞賛した。
95年ワールドカップ以来となる、日本のベスト8進出について指揮官は、「1試合ずつやってきたことが決勝トーナメントに結びついた。選手たちに本当におめでとうと言いたい」と話した。
また、エース澤の3得点で新記録樹立の活躍には、「昨年5月のアジアカップ以来、点が取れていなかったが、3ゴールで記録を塗り替えた。得点だけでなく、攻守に献身的にプレーする。今後も活躍してくれることを期待している」と喜んだ。
メキシコのレオナルド・クエジャル監督は、「日本におめでとうと言いたい。早々に2失点して、チームがガタガタになった。スキルでも技術でも優れてボールキープの上手い相手に追いつくのは難しかった。日本は優勝候補だ」とコメントした。
小倉純二会長コメント

「素晴らしかった。澤さんのハットトリックも見られた。ここまで圧勝するとは思っていなかったが。U-17代表チームやフットサル(名古屋オーシャンズ)に続いて活躍することで、被災地の励ましになるし、今日の試合はきっとそうなったと思う。このまま続けて行ってほしい。」
2011年7月1日15:00キックオフ(現地時間)
FIFA Women's World Cup Stadium(ドイツ/レバクーゼン)
なでしこジャパン 4-0(前半3-0) メキシコ女子代表

試合後選手コメント
MF澤穂希選手(INAC神戸レオネッサ所属)
「自分でもちょっと、びっくりしている。まさか3得点取れるとは思っていなかったが、チームメイトがいいアシストをしてくれたおかげ。宮間選手とは2点とも目が合った。男女共に歴代1位というのは光栄なこと。でも、帰ったら釜本さんから怒られるんじゃないかな。この試合だけでなく、もっと得点してチームに貢献したい。」
MF宮間あや選手(岡山湯郷Belle所属)
「決めるところで決めてくれた。いろいろな個性の選手がいて、楽しいチームになっている。この21人でなるべく多くプレーしたい。4点目など何人もの選手が関わってゴールになったもの。ああいうプレーはイングランドでも止められないと思う。思い切りぶつかりたい。」
MF阪口夢穂選手(アルビレックス新潟レディース所属)
「試合前に相手を分析してボールの取り方などがハマった。決勝トーナメントには前回大会では行けなかったので、とてもうれしい。でもここからが大事。次は1位か2位が決まる試合で気は抜けない。しっかりやりたい。」
FW大野忍(INAC神戸レオネッサ所属)
「(得点場面は)芝に引っかかるかなと思ったが、うまく前に抜けたので思い切り打った。永里からはあそこでパスをくれると思っていた。(シュートが)入ってよかった。結果を出せたのはチームとしてうれしいし、獲れる選手が獲ってくれたのがよかった。これだけの観客の応援はうれしいし、気持ちいい。自分たちのサッカーを観に来てよかったと思ってもらえるプレーをしたい。」
DF岩清水梓選手(日テレベレーザ所属)
「決勝トーナメント進出が決まって、ほっとしている。前の試合1失点していたので、無失点は自信になる。早目に点を取れたので余裕がでたが、個人個人の意識が高く、1対1をかわされても、粘り強くやれたのが勝因だと思う。」
GK海堀あゆみ選手(INAC神戸レオネッサ)
「苦しい時間を耐えられたのがよかった。DFががんばってくれていたので相手シュートを止めないと、と思った。澤さんに助けられた試合。良い流れで来ているが、(次に向け)切り替えてがんばりたい。」
FW安藤梢選手(FCR2001 Duisburg所属)
「メキシコは個人技もあると思っていたが、今日は自分たちのサッカーが上回っていたので、怖さはなかった。(永里選手との連携は)1戦目より良くなっている。一歩引いたところ(相手MFとDFの間)が空いていたので、そこで起点を作れれば良いと思った。イングランド戦は、まだ得点を取っていないのでゴールを取りたいし、勝点3を取って1位通過したい。」
DF近賀ゆかり(INAC神戸レオネッサ所属)
「前半少し抑え目だったので、後半はチャンスがあれば上がりたいと思っていた。4点目のように、相手が疲れている時間帯に動いて仕掛けるが自分の持ち味。それをどの時間帯でも同じようにやれるようにしたい。他国(ドイツ以外の国)同士の試合でここまで人が集まってくれることはうれしい。日本への応援があるのもとてもうれしい。
MF川澄奈穂美選手(INAC神戸レオネッサ所属)
「途中出場だったので、積極的に行ってアクセントをつけたいと思っていた。あのシュートは得意のコース。監督からも指示をもらっていたし、思い切ってやれた。イングランド戦は、チームの一員として勝ちにこだわっていきたい。出場したら、いい起爆剤でありたいし、ベンチからもしっかり声を出したい。」
MF宇津木瑠美選手(Montpellier HSC所属)
「(プレー)時間は短かったが、思い切ってやることが重要と考えた。楽しい10分だった。環境を変えて1年間やったことを試せる機会。1年ではまだ何も変わらないかもしれないが、全体的なところで見つけられれば、それが進歩した部分かと思う。」
FIFA女子ワールドカップ ドイツ2011
イングランド戦前日レポート「なでしこジャパン、気合十分でイングランド戦へ」
決勝トーナメント進出を決めている、なでしこジャパン(日本女子代表チーム)は7月4日、グループ1位突破をかけたイングランド戦へ向けて、ドイツ・アウグスブルグ市内で前日練習を行なった。
報道陣へ一部が公開された練習では、選手全員がリラックスした雰囲気でプレーの確認を行い、その後、試合会場となるスタジアムへ移動してピッチ状態などをチェックした。
日本はここまで2連勝でB組首位に立ち、2位のイングランドに勝ち点2差を付けている。5日の試合で引分けでも1位通過が決まるが、なでしこジャパン・佐々木則夫監督は「勝ち点3を目標に試合に入る」と、勝利で準々決勝進出を狙う意向だ。
1位通過ならA組2位と、2位通過なら同1位との対戦になり、A組の結果は、同じく5日に行われる、現在得失点差で首位のフランスと2位の開催国ドイツの対戦で決まる。
日本が対戦するイングランドは、第1戦でメキシコと1-1で引き分け、第2戦でニュージーランドに2-1の逆転勝ちと苦戦が続いている。
だが、佐々木監督は、「イングランドは欧州を代表する素晴らしいチーム。1戦目、2戦目は力を出していないようだが、2戦目に逆転勝ちして(日本との)3戦目は乗ってきている。そういう相手に、われわれが積み上げてきたサッカーが通じるか。選手のコンディションもいいので、いいプレーをしてくれると思う」と話し、力量を試す機会との認識を示した。
イングランドは勝たなければ、決勝トーナメント進出へできない。MFケリー・スミスを中心に、両サイドの選手のスピードと高さを生かしてロングボールで仕掛けてくると予想されるが、佐々木監督はそれも想定済みであると強調。「GK海堀を中心にトレーニングして、選手間でミーティングもしている。コンパクトにして出所を押さえたい」と話した。
「明日活躍しそうだ」と指揮官に言われた海堀は、「事前に相手の特長を確認して、活かせないようにプレーしていければいい」と言い、MF宮間は、「明日の試合から決勝トーナメントの気持ちで、負けたら終わりと考えてやろうと選手の間で話している。イングランドに勝てないと、次にフランスやドイツとあたっても勝てない。しっかり勝ちたい」と、気合十分だ。
DF岩清水も、「どの試合も簡単な相手ではないから油断はしていないし、明日の相手はグループリーグの中で一番やりがいのあるチーム。自分たちの力を100パーセント以上出さないと勝てない。我慢する時間も多くなると思うが、絶対に勝って1位通過したい」と話し、MF澤は、「相手のいいところを出させないようにできたらいい。自分たちの力どれだけ出せるか、楽しみにしている」と語った。
FW安藤は、「(デュイスブルグの)チームメイトとお互いに1位通過で抜けて決勝で当ろうという話をしている。1戦目より2戦目とチーム状態も良くなっている。できるだけ点に絡みたい」と抱負を語った。
日本‐イングランド戦は、現地時間5日午後6時15分(日本時間6日午前1時15分)に始まる。
FIFA女子ワールドカップドイツ2011 グループリーグ第3戦(vsイングランド)
試合結果
2011年7月5日 18:15キックオフ(現地時間)
FIFA Women's World Cup Stadium(ドイツ/アウグスブルク)
なでしこジャパン 0-2(前半0-2) イングランド女子代表
得点経過
15分 失点
66分 失点

スターティングメンバー
GK
21 海堀 あゆみ(INAC神戸レオネッサ)
DF
15 鮫島 彩(ボストン・ブレーカーズ)
4 熊谷 紗希(浦和レッズレディース)
3 岩清水 梓(日テレ・ベレーザ)
2 近賀 ゆかり(INAC神戸レオネッサ)
MF
8 宮間 あや(岡山湯郷Belle)
10 澤 穂希(C)(INAC神戸レオネッサ)
6 阪口 夢穂(アルビレックス新潟レディース)
11 大野 忍(INAC神戸レオネッサ)
FW
7 安藤 梢(FCR2001 Duisburg)
17 永里 優季(1. FFC Turbine Potsdam)
交代選手
56分 安藤 梢→18 丸山 桂里奈(ジェフユナイテッド市原・千葉)
75分 阪口 夢穂→20 岩渕 真奈(日テレ・ベレーザ)
82分 大野 忍→9 川澄 菜穂美(INAC神戸レオネッサ)
次戦スケジュール
2011年7月9日 20:45キックオフ(現地時間)
準々決勝 なでしこジャパン vs ドイツ女子代表