注 激しくネタバレしてます。
「この街ももう終わりだな」
不況のあおりを受けた結果がまともに出だした約3年前の山梨県甲府市という地方都市を舞台に、ただ毎日をやり過ごす土方、右翼かぶれの若いラッパー、ブラジル移民たちの、「今の自分たちのその先にあるものは何なのか」を漠然と模索する群像劇。
昨日観てきました「サウダーヂ」。
茨城県水戸市で開催された「水戸映画祭」の中の一作品として上映され、監督の富田さん、脚本の相澤さんによる舞台挨拶及び素敵なトークショーがありぃの、いよいよ上映開始。
そして観た感想、
「途轍もない映画を観てしまった」
韓国映画「息もできない」を観たときに近い感覚です。
上映前のトークで監督が「3年前の山梨県甲府市をそのままリアルに撮影しているが、現在は少し変わってブラジル人コミュニティなんかはもう無くなった」なんてお話されてましたが、
これがなんと、私の住む茨城県水戸市の現状の、まんまです!まんまの姿!
自分で住んでいて水戸市に税金を納めているからこそ言わせてもらいますが、
「この街ももう終わりだな」
これ、劇中で出てくる印象的なセリフですが、わが街水戸市も終わってます、完全に。
小泉政権がばら撒いた「市場原理主義」と言う名のウイルスに侵されたことにより商店街はほぼ壊滅。それでも若い人達が頑張って、なんとか我が街を盛り上げようと奮闘されてますが、もはや商店街単位の頑張りではどうにもならないレベルにまで侵されていて治療の施しようがなく、このままここで死ぬのを待つばかり。
甲府市と水戸市、もちろん他の地方都市に住む人にも感じられる現在の実状、共通点ではないでしょうか。
「この街ももう終わりだな」
の、セリフは高台から甲府の街を見下ろしながら発せられますが、映像のほとんどが地を這うような、まさに地べた目線で話が語られます。そして外国人の存在なども含め、
自分がそこに居る
というよりは
「自分もここに居る、実際に歩いてる」
というふうに感じずにはいられません。リアル!
で、この途轍もない作品を創り上げたスタッフはどんな人達かというと…
監督、 富田克也さん。
すいません、存じ上げてないです。
出演者、 すいません、議員役の宮台真司さん以外わかりません。
インディペンデントと言って差し支えないかと思われますが、だからこそリアル!だからこそ途轍もない!
「自分もここに居る、歩いてる」
という錯覚を後押しし、強烈に打ち震える作品へとなり得たのではないでしょうか。
例えば、「ALWAYS 三丁目の夕日」は昭和60年代が舞台だが、キャスティングは今テレビで活躍中の人たちである、という違和感。戦争映画なんかも同じですが、ようは、いくら時代背景を真似ようが、当時の風景をCGで表現しようが、戦闘シーンをリアルに見せようが、すべては偽物なんです。
舞台挨拶で富田監督が言われてましたが、出演者の9割以上が地元山梨県甲府市の人でほぼ無名、撮影ももちろん地元でCG無し。
なので逆に言うとね、
「コケる要素が満載!」
「山梨県甲府市以外でヒットする可能性はゼロ!」
でもおかしくないわけです。
で、実際そうなりつつありました。
去年、2011年上映当時は都内でのみ、しかも単館上映、正直私がこの作品の存在に気付いたときはすでに上映終了、調べるとDVDなどのソフト化もしないとのこと。
しかし観た人の口コミと、海外での絶賛が評価されたのか現在では、東京や大阪、京都で再上映が始まりだして、観ようと思えば観れる環境が整いつつあり、しかも都内では満席が続いてるらしいです。
この、トレンドどころか無名のキャスティングで、しかも舞台が実在する山梨県甲府市という地方ですが、この無名の役者さんたち、中には本気の素人さんもいるのですが、が、その人達が、本当にこれ以上無いほどに完璧な演技を見せます!
主役の土方(どかた。ようは土木作業員)の精司役を演じる鷹野毅さん。土方の立ち振る舞いがリアル!スコップの扱いとかプロですよ!
あと立て膝ついて「ズビーズビー」と音をたてながら納豆を食べる姿、ドラッグ描写、そしてあの!妄想の中を歩く姿……しびれた!
そしてその相方のビンちゃんを演じる伊藤仁さん(この二人は富田監督と古いお付き合いさりく、富田作品ではお馴染みの方らしいです)。
居る!こんな感じの人、周りに必ず一人は居ます。不思議なね、なんだろこの人?みたいな。
そして、右翼かぶれのラッパー役の田我流(でんがりゅう)さん。ラッパー役ですが、実際の地元ラッパーらしいです。
クラブシーンはもちろんのこと、夜のシャッター商店街でかますフリースタイルの格好良さは、言わずもがな!
そしてラストのあれ!あれですよ!
あとタイから出稼ぎに来てるミャオさんのカワイイこと!精司さんの奥さんもキュートだし、そして美心会(びじんかい)の何ともイカス存在感に、デリヘル店長のナイスなキャラ!
こんだけキャラが立ちまくっているにもかかわらず、このほとんどの役者さんが前述したように地元甲府市の皆さんというミラクル!
奇跡なんです!
キャスティングだけじゃなく映像も見事で何度も言いますが、
「自分もここに居る、歩いてる」
その自然さ!
クラブシーン、夜の河原、地元の祭り、シャッター商店街などなどー
最高です!シーンによっては鳥肌が立つほど!
そして、そしてです、
劇中で唯一のファンタジーなシーンが登場するクライマックスでの、
あの!
あの!
あの「わがままジュリエット」が爆音で流れる中で、思い出と理想と絶望がグチャグチャに混ざり合った夢の世界の途轍もない見事さ!
あぁ!!なんだ!すべては「わがままジュリエット」じゃないか!ガキの頃から今まで何百回と聴いてきたのに!カラオケで何度も唄ったのに!
今、始めて気付いたよ!
………………
脱帽ですし、これが感動でなくてなんなんだ!
長々と書きましたが、
えとね、現在の地方都市が抱える地場の衰退、空洞化、異国人どうしの差別、貧困、ドラッグの蔓延などをテーマとして取り上げてるように見えますが、というかもちろん監督自身がそのつもりで描いてるのかもしれませんが、私はそんなの考えずに楽しめば良いと思います。
映画だからフィクションなのはもちろんだけど、リアリティがあるからフィクションが際立つわけで、映画だからって金かけてCG盛りだくさんでキャッチーな役者をつかって夢物語を見るのも良いと思いますが、たまには本物の作り話に魂を揺さぶられてみてはいかがでしょう。
観れる環境にある奴は、迷わず観にいけーー!って!マジおすすめ!!




