2024年のツール・ド・フランス…記録には残ります。そう、確実に。ひとシーズンにふたつのグランツールを制するという数十年ぶりの偉業を、ひとりのスロベニア人ライダーが達成したイベントとして、サイクルロードレースの歴史に刻まれます。後年、末永く、「あのとき、こんなことがあったね」と語り継がれるだろうし、多くの人々の記憶に残るでしょうが、オバさん的には別のお話になります。

というワケで、今年のツール・ド・フランスが終わったタイミングに、あれこれと思うところを個人的な思考で語るのが今回の投稿です。

 

「ドラマチックツール」というタイトルを作り、今年のツールの感動を語ろうと思ったのですが、それも3回投稿しただけで終わりました。とくに、山岳決戦が本格化した2週目後半以後は、オバさんの感情を揺さぶってくれる物語の発生はありませんでした。ロマン・バルデの涙のマイヨジョーヌと、マーク・カヴェンディッシュの新記録達成。今年のツールでオバさんが感動した出来事は、このふたつだけでした。

もちろん、逃げやスプリントで勝利し歓喜を爆発させる場面はあったけど、それはいつものロードレース風景です。3週間レースが続いても、正直、本腰入れて観戦したのは1週目だけ…というのが、オバさんの2024年ツール・ド・フランスでした。とくに3週目は、結局ひとレースもゴールまで観戦せず。こんなグランツールはもちろん、ファンになって初めての経験でした。ロードレース大好きオバさんが、これほど冷めてしまった原因はただひとつ。あまりにも強すぎたタデイ・ポガチャルです。

 

6勝ですよ。21レースのうちの6勝…しかも、ピレネーとアルプスの山岳決戦4レースはパーフェクト勝利。さらに、勝負どころでライバルを引き離すと同時に、先行する逃げのライダーたちもかる~くパスして行く走りは、凄いとか強い云々のほかにオバさんにある種の疑問を持たせました。ほかのライダーたちはもちろん、ライバルとされたふたりに対しても、あまりにも差がありすぎたからです。そんなとき、海外のネッ記事で目にしたのが「一酸化炭素リブリーザー」という言葉でした。

高地トレーニング用の機材のひとつで、UAEやヴィスマが使用を認めており、もちろんUCIの規定違反ではありません。また、これを取り上げたのはひとつのメディアだけで、その後、話題が発展してない現状を見ると、タデイひとりの特別措置ではなさそうです。ともあれ、そんな些細なことすら気になるほど、タデイが圧倒的だった今年のツール。多くのファンの記憶に刻まれるでしょうが、オバさんのそれには残りません。個人的に大好きな人間味あふれる感動ドラマとか、サイクルロドレースの真髄を堪能できる高度な勝負があまり感じられなかったからです。

 

タデイ・ポガチャルがドッカーンと加速し、ふたりのライバルも反応するんだけど、結局は置いて行かれる。ツール最大の勝負どころであり、観る側にとっても最大のお楽しみだったはずの、山岳4レースのすべてがこの展開でした。まったく同じですよ。こりゃもう、オバさん的には忘却の彼方へ消えていくレース。そして思ったのは、今年のシーズンで、タデイが参戦するレースの観戦はやめよう、ということです。

ほかのライダーたちとの実力差が、あまりにもありすぎます。たぶん今後も、ジロやツール同様に勝ちたいレースに軽く勝っていくと考えます。高度なプロの勝負を満喫したいオバさんとしては、「つまらなさ、この上なし」ってことになりますので…。

 

「ビッグフォーの対決」なんて、事前にメディアが盛り上げてくれたけど、フタを開ければタデイの圧勝だった2024年のツール・ド・フランスです。その要因は幾つかあり、一番は直接のライバルの怪我による準備不足でしょう。ヨナス・ヴィンゲゴーが完璧な状態でツールに参戦できていたら、彼らとそのチームの「高度なプロの戦い」を堪能できたはずです。このあたりが、個人的に残念でなりません。

ただ、ちょっと嬉しかったこと。大好きチームのウルフパックが、総合上位の集団にいてテレビ画面に映っておりました。去年までは、「総合争いなんて関係ねぇよ」と集団の後方でヒラヒラし、山岳ステージなんか完全にグルペットだったウルフたち。でも今年は、エースをアシストする彼らの力強い走りが楽しめました。確か…第20ステージでしたか。ヤン・ヒルトやミケル・ランダが、総合争いの集団の先頭でグイグイ引っ張る光景。これを見たオバさんの脳裏には、2019年のツールがよみがえりました。

黄色ジャージで頑張るアラフィリップを、当時のイギリスの常勝軍団がどう捉えていたか。そのチームも今年はウフルたちの後方で、5年の歳月と劇的な変化を噛み締めるツールになりました。

 

では、最後に。ツール初参戦で3位表彰台と、当然のヤングライダー賞を獲得した、推しライダー・レムコに心からの祝福を…。

「3週間、確実に成長したね。来年が本当に楽しみです。おめでとう! レムコ!」