オバさんの語るcycle「ジロ、3人の助演男優賞」
2026年シーズン最初のグランツールが終わり、今はその余韻を堪能しております。ピンクジャージの行方に関しては、開幕前から安易かつ着実な予想がなされ、結果もシナリオ通り。ヨナス・ヴィンゲゴーと彼の所属チームが、完全・完璧にコントロールしきった3週間でした。それでも、いくつもの感動的な人間ドラマを楽しめたのは、さすがグランツールということでしょう。ポイント賞を激しく争いながら、ライバルの強烈な一撃を浴びたあとリタイアしてしまったUAEのライダーとか、懸命に頑張るも勝てず、最後の最後でバンチスプリントを制したイタリア人ライダーなど多くの物語がありました。その中から、今回は個人的に「感動トップ3」と感じた3人を語ります。まさに、ジロ・デ・イタリアという最高峰の長編映画を彩った助演男優たちです。≪ ジュリオ・チッコーネ ≫素人感覚ですが、終わった後の印象として、「テレビ画面に映る時間が長かったなぁ」と感じたのがこの人。感情表現が豊かで、点火しやすい性格なのか逃げメンバーや、ときにはチームスタッフにも怒っていましたね。そんな様子が楽しめたのと、本人もコメントした通り「とにかく、ひとつ勝ちたかった」今年のジロ。その執念の走りには、オバさん感動しきりでした。もうひとつ獲得に執着した山岳賞は見事手にしたけど、ついに最後まで、勝利の女神は微笑みませんでした。3回4回と勝利の美酒を受け取る人もいる中で、なぜかチッコーネは彼女に見放されてしまったのです。また、悲願のマリアローザに喜んだはいいけど、それを着用して走った日は大雨。チームの黒いウインドブレーカーに隠れ、ほとんどお披露目できませんでした。この運の悪さというか、ツキのなさにも惹かれたオバさんです。全体で評価するなら、山岳賞の獲得はかなりの高得点だし、チッコーネのキャリアをさらに高めてくれるでしょう。それでも、背後から王者ヨナスが迫る坂道を必死に駆け上がる背中に、彼の執念の炎を見た今年のジロでした。≪ ジュリオ・ペリッツァーリ ≫今年のジロの助演男優賞、ふたりめはもうひとりのジュリオ。名前が長くさらに噛みそうなので、オバさんブログでは「ペリくん」と呼ばせていただきます。メディアやファンを含めた開幕前の予想では、ヤングライダー賞の最右翼に彼の名が挙がり、本人もその気満々だったと思います。オバさんのド素人目にも、開幕後しばらくは好調なように見えたんですがね。その流れからか、王者ヨナスがピンクジャージ獲得への勝負をかけた第14ステージ、彼の加速に唯一喰らいついたのがペリくんでしたね。「おお~、凄いぞペリくん!」と盛り上がったのも束の間。あくまでド素人の感じ方ですが、この場面こそ、彼の今年のジロにおける「潮の変わり目」だったような気がします。以後バッドデイもあり、気づけば総合トップから30分遅れてヤングライダー賞もはるか彼方へ…。期待が大きかっただけに、本人の喪失感は計り知れず。「ゼッケンを燃やし捨てたい」。ローマのフィニッシュ直後、そう語ったペリくんの言葉にドラマを感じました。悔しさだけが残ったけど、3週間のグランツールに対するちょっぴりの自信過剰と、ほんの少し若さの暴走が感じられた物語。ただこの経験は、若い彼を物凄く成長させるでしょう。≪ ティム・レックス ≫オバさんが選ぶ、今年のジロの最優秀助演男優賞は彼。ほかのスポーツにはない、サイクルロードレースの魅力を全身と全顔(?)で表現してくれた「ティムくん」ことティム・レックスです。個人勝利のスポーツでも、チームメイト全員がひとりの勝利のために走るという特徴は、過去にも様々なドラマを生み出してきました。そして今年のジロは、オランダのワールドチームがマリアローザ争いを圧倒的に支配したので、アシストたちの活躍が目に留まりました。そんな3週間、とくに2週目あたりから話題を集めたティムくん。プロトンの先頭で隊列を引っ張り、そうでなくてもテレビ画面に映る時間が長くなるのに、離脱が近づいたときの表情はまるで顔芸ですよ。いや、「顔芸」なんて表現…怒られるかもしれませんね。苦痛に歪んだあの表情は、本人の説明によると「限界を超えたあとの痛み」だそうで、これもまた、サイクルロードレースの特徴ですね。ただこの表情、メディアが「ペンイフェイス」と称して盛り上げ、レース後にチームメイトからもイジられたと聞きました。これはティムくんの様子が、「苦しくて大変だったね」以外に何か惹きつけられるモノがあったからこその出来事だろうと、オバさんは思いました。本人も注目を意識したのか、第20ステージで猛烈に仕事し「出し切った」あと、バイクカメラに笑顔を向ける姿は最高! この瞬間に、ティムくんの最優秀助演男優賞が確定です。誤差や乱れが微塵もない巨大な精密機械のように、圧倒的な強さ・正確さでジロを支配したヴィスマ・リースアバイク。アシストたちはいわば機械の部品なんだけど、その部品のひとつが、とんでもなく素敵な人間味を感じさせてくれました。ジロの走りでチーム内の評価は爆上がり。まだ22歳のティムくんの、今後に期待です。