ライバルの背中が遠去かっていく。追いかけたいが、自分の脚にその力が残ってないという現実を、痛感する瞬間。1位以外は全員敗者がプロスポーツの世界だし、100人以上の参戦者の中の2番目でゴールしても、ポディウムで華々しく表彰されることはない。そんな勝負の分かれ目を捉えた風景が、今回の1枚である。

絵的には地味だし美しくもないが、後に振り返ったとき、これは、2024年ツール・ド・フランスのターニングポイントになるかもしれない風景だ。第14ステージの残り4・6㎞付近、一気に加速したタデイ・ポガチャルは、後方右のヨナスに約2分、左のレムコには2分22秒のタイム差を手中にする。少し小さい姿だが、食らいけなかったふたりの表情と、このときの気持ちをあれこれ想像できる風景でもある。常識的な普通の思考で語れば、以後、タデイに予想外のアクシデントが発生しない限り、彼のマイヨジョーヌは確定したと言い切れるだろう。

あくまで個人的な感覚だが、サイクルロードレースはこうした勝負の分岐点が、ほかのプロスポーツよりはっきり表れる場面が多いような気がする。試合後に見直して、「ここが分かれ目だったね」と認識するのではなく、誰の目にも明らかに、レース進行と同時のリアルタイムでそれを目撃できる。ロードレースの魅力のひとつだと、いつも感じる瞬間を今回投稿した。