4人の主役が輝きました。やっぱ、今年のツール・ド・フランスの「売り」はこれでしょ!と強く感じた第11ステージでの、ビッグ4のガチンコ対決です。

いや~、楽しかった! ホント素直に、心の底から楽しみましたよ。まさに典型的な、プロスポーツの醍醐味です。ちょっと屁理屈を言わせてもらうと、4人対決ではなく、2人と2人のふたつの勝負がレース後半を盛り上げてくれました。そこで今回の物語第3章は、オバさんが勝手に妄想した主役4人を語ります。

 

≪ タデイ・ポガチャル ≫

今年のツール・ド・フランスで、悲願のマイヨジョーヌ奪還を目指すスロベニアの天才ライダーは、最大のライバルの仕上がり具合を相当気にしていたはずです。それを試す動きが何度か見られ、第11ステージで自分の気持ちの中にあった「モヤモヤ」を吹き飛ばそう…なんて考えたかもしれません。1級山岳の頂上手前600m、ゴールまで約31㎞地点での仕掛けた走りに、オバさんはそう思いました。

ヨナス・ヴィンゲゴーに最大35秒差をつけ、「こりゃ、行ける!」と感じたか感じなかったか…。いずれにせよ、次の山岳の山頂までに追いつかれる展開は、彼の「予定」になかったはずです。振り返り、迫りくるライバルを目視したときのタデイの心理状態が、彼の一瞬の表情で読み取れます。思っていた以上にライバルの脚が復活していると、強く実感した瞬間です。実際にはまだ、ヨナスとのタイム差は1分以上あるワケで、彼らのレベルを考えるとこれはけっこうな大差です。さらにチーム力の話をすれば、今年の最強は間違いなくUAEであり、ヴィスマに去年の強さはありません。

それでも、ゴール直後のタデイには「恐怖の色」が感じ取れました。何かこう…得体の知れないモノが、背後から確実に接近して来る静かな恐怖と言いますか…。今後のステージで、これが現実化するか思い過ごしで終わるか。注目です。

 

≪ ヨナス・ヴィンゲゴー ≫

ツールに参戦できたことを奇跡と表現し、「これから先の出来事は、ぼくにとってボーナスだ」なんてコメントしたディフェンディング・チャンピオン。バスクのレースで大けがを負って以後、彼とチームは実に賢い情報戦略を展開したと、オバさんは感じます。このチームの管理能力のレベルからして、ヨナスの心と身体の回復状況や、ツールでどこまで走れるかの可能性の確率を、かなり正確に把握していたと考えます。しかし、具体的な情報はいっさい発せず、抽象的な表現を繰り返しました。「ヨナスの回復能力はチャンピオンに相応しい」とか、「どこまで走れるかは、神のみぞ知るだ」とかね。ま、本音だったかもしれないけど、オバさんはこれ、ヴィスマ独特の情報戦略だと受け止めます。

第11ステージ時点で、この戦略はライバルの心理に相当効いていると考えます。それでも、バスクの事故のときは「死を覚悟した」というヨナス。まさに地獄を垣間見たどん底から、ライバルを負かしてのツールのステージ優勝まで復活しました。彼の気持ちを素直に表現したインタビューでの涙が、実にドラマチックでしたね。

さて、少なくても現時点までは、「ここで走れるだけで幸せだ」みたいなコメントを続けるヨナス。去年もそうであったように、隠し続ける「牙」を第3週目で見せるでしょうか? 注目です。

 

≪ プリモシュ・ログリッチ ≫

「なんで、ここで転ぶの?」という言葉が秒で口から出たけど、ゴールの姿を眺めながら呟きました。「これがログラの魅力なんだよね~」。後でネット記事を見たら、新しい3㎞ルールの適用でライバルとのタイム差がつきませんでした。良かったね! ログラ。

なんか…この人の場合、あれこれ理屈を語るより優しく見守りたい気分になるんですよ。絶妙の場所とタイミングを選び、ここで転ぶか?ってところでひっくり返ってみせる、実に愛すべきキャラクターであります、はい。ツール開幕時点で、見事に絞れた体形を見て「こりゃ、いけるかも」と期待した推しライダーだけど、ちょっとタイム差つけられたし、絶好調時期のキレッキレ走りはまだ見られませんね。ただ、このスロベニア人ライダーはママの気分で見守ってあげるのが、オバさんの楽しみ方なんですよ。そんな想いを裏切らない、第11ステージでの絶妙な落車でした。

2週目、3週目でどこまで脚の状態を上げられるか。彼独特のキレッキレ走りを堪能できるステージが来るのか。注目です。

 

≪ レムコ・エヴェネプール ≫

世界最大の自転車レースに、満を持して初参戦したベルギーの天才ライダーは、現実をしっかり見極めていました。「総合5位以内と、できればステージ勝利を狙う」という事前に繰り返されたコメントは、加熱しすぎる地元の期待を冷やす意図も含まれていたでしょう。10代でプロデビューした当初から、物事を冷静に俯瞰し、正しい答えを導き出す能力がズバ抜けていたけど、さらに磨きをかけた24歳は現時点で目標をクリアしております。しかも、厳しい山岳コースで予想されるタデイとヨナスの一騎打ちには対抗できないと、しっかり自覚しているところもまた刺さるんですよね~!

実に賢いレムコですが、スポーツマンらしい「熱さ」を第9ステージでチラリを見せてくれたし、ライバルの対応にちょっと文句いうあたりも彼の魅力です。オバさんの推しライダーだけど、個人的な想いを語らせてもらうと、今年のツールのレムコに関しては、バッドデイなく実力相応の走りをしてくれれば大満足。今後の厳しい山岳ステージで、ライバルたちにどこまで食らいつけるか…注目です。