2024年シーズン最初のグランツールが終わりました。サイクルロードレースを愛する皆さま方の、今年のジロ・デ・イタリアのご感想はいかに? あくまで個人的な、オバさんのファン目線の感想では、マリアローザ争奪戦がまったくなかったという意味で、自分のファン歴の中で最低のグランツールになりました。3週間を通し、レースのリザルトはひとりのライダーの気分次第。勝ちたいステージは簡単に勝つし、「今日は行っていいよ」となれば、逃げ屋たちが嬉々としてゴールを目指す…そんな今年のジロに、総合争いをめぐるプロの勝負は皆無でしたね。でも、2位以下の戦いが熾烈だったって? 確かにその通りだけど、オバさんの戦前の予想が当たって、1位と2位のタイム差ほぼ10分。こういうのって、オバさんの個人的な感覚では、「もう、どーでもいいよ」になるんです。

本来、一番楽しみにするはずの総合系ライダーたちの戦いが、第1週目の早い時期に終焉した今年のジロ。楽しみ方を切り替えたそれが、推しチームのライダーたちをひたすら応援することです。幸いにもスーダル・クイックステップは、今年のジロに「ある程度」のリザルトを残すことができました。最終日、ふたりだけになってしまった去年とは大違いの、2024年ジロ・デ・イタリアのウルフたちを語ります。

 

≪ マウリ・ファンセヴェナント ≫

まずは、この人。オバさんのイチ推しライダーです。ジロ前の春のクラシックで成長著しい走りを披露し、「できれば、ジロで勝ちたい」と話したマウリくん。ただ、チームメイトが1週目で総合トップ10に入ったし、元世界チャンピオンも復活の兆しを見せて積極的に走ります。こうした状況下では、アシストに徹する走りを要求されるのが、今のマウリくんのチーム内における立ち位置。それを充分すぎるほど理解しているので、3週間、自分の仕事を完璧に遂行しました。勝ちを意識した走りと言えば、総合系ライダーの集団に最後まで残り、トップ10内でフィニッシュした第1ステージだけ。以後は逃げに乗ればジュリアンをアシストし、プロトン内ではヤン・ヒルトに寄り添い、それぞれに勝負の動きが出ると、静かに後退し姿を消す走りに徹したマウリくんです。

それでも、何度か逃げ集団に入りしっかりテレビにも映ってくれたし、終盤の山岳ステージのダウンヒル右カーブでは、後輪を滑らせた超オーバーステアで転んだり…と、まぁ、それなりにオバさんを楽しませてくれました。で、最終の総合リザルトは1時間50数分遅れの30位。いーじゃないですか。マウリくん、頑張りました!

 

≪ ティム・メルリール ≫

ウルフパックにおいて、エース・スプリンターの地位を完全に確立したティムです。今年のジロで3勝を記録し、2024年シーズンは現時点でもう10勝。凄いですねぇ! ティムの何が凄いって、ゴール直前のカオスの海を実にしなやかに泳いで行けること。オバさんのド素人感覚では、ピュア・スプリンターにもタイプがあって、勝つには完璧なリードアウトを必要とするライダーもいます。最後の最後に放たれて、100mくらいで「ドッカーン!」ってタイプです。でもティムは、残り1㎞を切ったあたりからの位置取りが、まさに神技。スルスルっと抜けて行くあの走りは、たぶん、努力や練習で得られたモノではなく「才能」だと思います。今年のジロでは一度だけ、その動きが「斜行」と取られてしまいましたけどね。

ステージレースにおいて「最初の平坦コースに強い人」と言われ、後半に勝てないなんて批判も、今回、完全に吹き飛ばして見せましたね。平坦ステージの大半はレースに動きがなく退屈するんだけど、最後に繰り広げられるトップスプリンターたちの、文字通り世界最高峰の勝負に大満足。そして観終わったあと、「やっぱ、スプリンターってカッコいい」としみじみ思うオバさんです。

 

≪ ヤン・ヒルト ≫

ご本人には大変申し訳ないんだけど、大好きチームに所属していても、まったく気に留めなかったライダーです。今までのキャリアで、ステージレースの総合トップ10内に何度も入った総合系のウルフなんだと、今回、初めて知った次第でございます。ヤンさま、改めてすみません…。まぁ、ウルフパックの総合系ライダーといえば、スターオーラ全開のレムコが、ほかを圧倒していますからねぇ。地味な優良総合系ヤンさま、今年のジロ・デ・イタリアでもその本領発揮です。

1週目で13位から10位。2週目はその順位を死守し、3週目を終わってみればなんと総合8位ですよ。実に地味に、しかし確実に順位を上げた走りは、こちらもしっかり地味でした。華やかに勝つティムや、連日テレビに映って力強い走りを披露するジュリアンと比較すると、ヤンさまの頑張りはあまり評価されなかったような気がしてなりません。ちょっと気の毒に感じたから、このブログで語らせてもらいます。そりゃもう必死に、マリアローザを含む総合系の集団に食らいつきました。クイーンステージやチーマコッピの、厳しい山岳ステージでも。これほど頑張ったのに、チームの公式ホームページのジロ最終日の記事で、最後の3行しか語られないなんて…可哀そうです。

 

以上、今年最初のグランツールのウルフたちでした。次の日曜日からは、いよいよツールの前哨戦、ドーフィネが始まります。そして、スター・レムコがついに始動! 楽しみですね~!