サイクルロードレースのテレビ中継を観終わったところで、「ああ、今日は楽しめたなぁ」と感じるのはどのようなレースでしょう? これは、個人それぞれの感覚やレースに何を求めるかで、まさに千差万別・百人百様ですね。だから、オバさんのド素人的個人思考と前置きし言わせてもらうと、レースのお楽しみはズバリ、緊張感と高揚感、さらに人間味あふれるドラマ性です。プロフェッショナルな勝負の行方を、ハラハラ・ドキドキしながら見守る…そして勝ちと負けのドラマが集結したとき、自分の心と身体は感動に満たされ、主役を演じたライダーたちの「物凄さ」を実感します。オバさんの中では、この感覚の最高峰が2022年のツール・ド・フランス第18ステージ。あまりの感動に身体が空間を浮遊するような感覚と、ワウト・ファンアールトがゴールラインで吠えたあの風景は一生忘れません。

では、ジロ・デ・イタリアはどうでしょう。去年は雨と寒さでライダーたちが畏縮しまくった第1週目が、観る側としてはマジつまらなくて、ネガティブな投稿をした記憶があります。でも終わってみれば、けっこう楽しめたグランツールでした。30代のオジさまライダーふたりの、ピンクジャージを賭けたガチンコ勝負。終盤のタイムトライアルでの劇的逆転。感動的な人間ドラマの中心に、プリモシュ・ログリッチがいました。

ならば、今年、2024年のジロ・デ・イタリアは?

 

2日目の山頂ゴールのレースで、早々とマリアローザ獲得。以後、第1週が終わろうとしている現時点の総合争いは、1位と2位の間に2分30秒以上のタイム差があります。これは、ジロのスタート前に誰もが確信したとおりの現実であり、事実上、マリアローザをめぐる勝負は終了しています。メディアやファンの注目は、タデイ・ポガチャルがこのまま最終日までピンクジャージで過ごすかどうかだけ。

まだ先は長いし、2週目の途中あたりで大逃げを許容し、支障のないライダーに一度はピンクジャージを譲るという戦略は、あっても不思議じゃないですね。ただ、タデイの性格を考えるに、それができるかどうか…。「全部のレースに勝つつもりか」なんて意地悪な質問をされた第3ステージ、プロトンの前に飛び出たのは、アタックしたライダーに対する脊髄反射のように、オバさんには見えました。レース後、「バンチスプリントで混乱するプロトンの中より、安全な場所を走りたかった」と言い訳したタデイ。これはゴール後に考えたセリフであって、その瞬間は無意識だったと個人的には思います。「楽しかったのは分かった。でも、明日は静かな1日にしようじゃないか」なんて、ゲラント・トーマスにSNSでチクリと刺されるあたりも、タデイらしくて可愛いんだけど…。

 

ともあれ、2024年ジロ・デ・イタリアのマリアローザを、ローマで着用するライダーはタデイ・ポガチャルのほかにはいません。もう一度言うけど、グランツールの醍醐味である総合優勝をめぐる戦いに関しては、第1週目…いや、第2ステージでおしまいです。そうした現場の空気感を嫌うのか、本人は「まだ終わってない」と言うけど、実力による真っ向勝負でタデイに勝てるライダーがいないという現実を、わたしたちは素直に受け止めるべきですね。

もちろん、タデイの言う通りイタリアでのグランツールはまだ続きます。彼以外のライダーがローマでマリアローザを着る可能性も、当然。ゼロではありません。ただしそれは、ケガか病気によりスロベニア人ライダーがリタイアした場合のみ可能、ということになります。ならば今後2週間、何を楽しみにジロ観戦すればいいのでしょう? 2位以下の表彰台争い、各ステージでの一等賞争いとか、人それぞれに観戦ポイントを見つけることですかね。

ちなみに、オバさんは風景と推しライダーです。町や村の佇まい、大地の彩りなど、ヨーロッパの風景では個人的に、イタリアがもっとも美しいと感じておりまして。そう、フランスやスペイン、ベルギーよりも心に染みます。ましてや、今は新緑の季節。それを眺めるだけでも癒されるし、去年も雪のドロミテ山塊に大感激でした。そして、推しライダーのマウリ・ファンセヴェナント。第1ステージで頑張って総合トップ10入りしたけど、40㎞越えのタイムトライアルは、マウリくんには地獄でしかありません。マリアローザから4分以上遅れ、現在20位。それでも、2位以下とは2分ちょっとの差なので、今後、どこかのステージで逃げに乗り、オバさんを歓喜乱舞させてほしいな…。

というワケで、今年のジロの現時点の気分を語ってみました。