純粋な実力差で、走るステージが違うと感じさせるライダーの出現は、過去に何度もあったそうです。だから、リエージュ・バストーニュ・リエージュで改めて痛感した現実は、その再来ということになります。レースのスタート前から、タデイ・ポガチャルが勝つとみんな解っていたし、彼がどこで仕掛け、どのような走りをするかみんな知っていたのに、そのシナリオ通りのレース展開を誰も変えられませんでした。

オバさんの中では、こういうのを「プロの勝負」とは言いません。ひとりのドライバーの「走れば勝つ」をみんな理解していて、その通りの現実が延々と続く現在のF1と同じです。つまり、勝負ではなくショー。オバさんの目には、テレビ画面に映る「独走タデイ」が、去年のレムコと鮮やかに重なりましたよ。アルデンヌ・クラシック最後を飾る、このラ・ドワイエンヌに限定すれば、サイクルロードレースとして心底楽しめたのは、2020年だけのような気がします。それ以前は、オバさんのファン歴に刻まれてないので…。

もう何度も語っていますが、2位以下は敗者の並び順に過ぎないのがプロの勝負の世界です。そこを割り切って今年のリエージュを振り返れば、イチ推しライダーのマウリくんの頑張りが唯一の救いだったと思います。もし、レムコがエースナンバーを背負い走っていたら、マウリくんの6位はなかったワケで…その意味では録画映像が保存版になる今年のラ・ドワイエンヌでした。

 

さて、リエージュで誰もが予想した通り、レベルの違う脚を見せつけたタデイ・ポガチャルの、マリアローザ獲りがいよいよ始まります。5月4日開幕のジロ・デ・イタリア。今年最初のグランツールは、総合争いに限ればプロの勝負などほど遠いモノになると、ド素人のオバさんですら予想…いや、確信できます。

タデイに対抗できそうなライバル? いやいや…専門家たちが何人か名前を挙げていても、それが虚しく感じるほどの実力差がありますよ。マリアローザ獲得競争に関して、タデイと戦えるライダーは今年のジロにはひとりもいません。タデイと彼チームが思い通りコントロールする3週間になるだろうし、最終日には2位とのタイム差が10分以上…なんてコトになるかも。ポジティブではない表現だけど、状況を冷静に分析した、これが現実だと思いますよ。だから個人的には、今年のジロは各ステージでライダーたちが狙う、個々のステージ勝利を賭けた勝負だけを楽しむつもりです。

日本の解説者も、海外の専門家たちも、「グランツールは何が起きるか予測不能」と言います。職業柄、「ジロはタデイで決まり!」なんて軽率に言えないんでしょうが、ウラを返せば、何も起きなければピンクのジャージの行方はもう決まっている、ということです。

そこらへんを充分に理解し、ある意味覚悟して、ジロ・デ・イタリア2024を観戦します。