オバさんの感覚では、黄色は春のイメージです。菜の花の色、タンポポの色。交差点の信号で停車したとき、ふと向けた視線の先の道端にこの色を発見し、「ああ、春が来たなぁ…」なんて呟く自分がいます。で、サイクルロードレースの黄色は近年、ヨーロッパのシーズン幕開けである春のクラシックレースを圧巻しております。なんかこう…風物詩みたいになりそうなのが凄いというか、恐ろしいと言うか。

去年までは「春のユンボ祭り」。今年は「ヴィスマ祭り」ってところですか。個人的な見方だけど、少なくとも現時点では、背筋が寒くなるほどの強さ(確実な強さ)を感じるオランダのワールドチームのお話を語りましょう。

 

オバさんが本気の観戦モードに入るのは、3月2日のストラデ・ビアンケからです。実際のヨーロッパのシーズン幕開けは、その前のベルギー石畳みクラシックだけど、テレビ観戦できませんからねぇ。この春のクラシック幕開けを告げる2レースを終え、トスカーナのレースがまもなくの現在、ヴィスマ・リースアバイクにオバさんがもっとも強く感じるのは、ユンボ時代と何も変わらない緻密な計画性です。3月・4月の怒涛のレース展開で、ライバルチームとの勢力図がどうなるかなど誰にも分りません。ただ、現時点だと狙った「獲物」を手にする力の強さ・緻密さは完璧です。つまり、シーズン全体を通して、いつ、どの舞台で勝たせるかという計画が主要ライダーたち個々に設定されており、それを成功させるための正確・確実なミッションのレベルが、2月最終週のふたつのレースに垣間見えたのです。

ちょっとカタカナ多めだけど、頑張って読んでください。オムループ・ヘッド・ニューズブラッドとクールネ・ブリュッセル・クールネ。ベルギーを舞台にした、いわゆる石畳系クラシックのレースふたつは、動画サイトの短い映像で観ただけです。それでも、まさに「イエロー・フェスティバル」なレースだったと感じ取れます。優勝者はもちろんだけど、短い映像にヴィスマのライダーが何人、そして何度映っていたでしょう。レース全部を観戦してないので正確とは言えないまでも、これは彼らがレースをコントロールしていたと受け止めてもいいかと…。海外メディアの記事にも、「レースを支配した」と表現されていたので、オランダのワールドチームは2024年も強いです。そう、「個」の力を上げ、組織を強くするという、ある意味プロスポーツでは当たり前のことなんだけど、それがこうも鮮やかに見えると、背筋が寒くなるような凄みを感じます。

 

さて、日曜日のレースに勝ったワウト・ファンアールトは、今季最大の目標達成のために高地トレーニングに戻るそうです。個人的な感じ方だと、けっこう繊細な彼は、チームの高度でメリハリの効いたミッションがお気に入りなのかも。フランドルのレースと、パリ~ルーベ、そしてジロ・デ・イタリア。ここでの勝利が最大目標とすれば、現時点のワウトくんの仕上がりは6~7割ってところですかね。

もうひとり、今年は完全にチームのエースライダーとなったヨナス・ヴィンゲゴー。2022年の春先のレースでは、中盤以降に後方へ下がったりしていたので、誰もヨナスを気にしませんでした。そう、ツールのあのモンヴァントゥ登坂で、タデイ・ポガチャルに40秒以上の差をつけるまでは。去年も、春のクラシックで大活躍のタデイと比較され、「ツールまでに間に合うの?」なんて言われたりしました。今年はどうでしょう? ヨナスの始動レースとなった、スペインのステージレース「オ・グランカミーニョ」の走りは圧巻でした。ステージ3連勝で総合優勝。しかし、彼にはたぶん今年も、ツール・ド・フランス一点に絞った最大級に強力で綿密なミッションが遂行されるはずです。

 

主要ライダーにシーズン中のいつ、どのレースで勝たせるかという計画はすべてのワールドチームにあると思います。例えば、オバさんの大好きチームのウルフパック。ベルギーの石畳みレースが散々で、過去の栄光を思い出し切なかったけど、レムコ・エヴェネプールの「ツール・ミッション」はあるだろうし、現に遂行しているはずです。しかし、そのミッションのレベルがヴィスマに追いついているか否か…。答えは現実のレースに鮮明に現れるでしょう。春のイエロー・フェスティバルがそれを物語っていると、オバさんは感じています