サイクルロードレースでオーストラリア、と言えばツアー・ダウンアンダー。そしてスペインとは、「こりゃ、最高! 保存しよう」と感じたシクロクロスの開催地です。あくまで個人的な感想だけど、プロスポーツの楽しさにタレント性は大切…と痛感したふたつのイベントに関して、今回は語ろうと思います。

 

まず、新しいシーズン最初のワールドツアー。個人的にはこの「最初」しか興味のない、真夏のオーストラリアのステージレースです。ライブ映像で観戦する久しぶりの感覚とか、ワールドチームの新しい名前を覚えたり、ジャージデザインを眺めて「イマイチ」とか「いいねぇ!」なんて勝手に評価するのが、このイベントの楽しみ方でしょうか。で、プロのサイクルロードレースとしてのお楽しみとなると、申し訳ないけどほぼゼロです。

6日間のレースのうち、4ステージが基本平坦コースの集団スプリント。数名の逃げを残り2~30㎞あたりで吸収し、参加ライダーのほぼ全員で構成する巨大プロトンのままゴールへ…。放送時間の3分の2は、逃げ集団もプロトンも緊張感のない、距離を消化するだけのレースが4日間続きました。さすがのオバさんも、第4ステージは逃げが吸収された時点でテレビのスイッチを切りましたよ。週末2日間の「山岳決戦」というけど、土曜日は距離3・8㎞、平均勾配約8%の2回登坂。最終日は3回登ったところで1・3㎞…わずか1300mですよ。これが、平均勾配15%越えの激坂ならば楽しめても、目にする数字は前日と同じ程度。こうしたレースを満喫できるか…少なくともオバさんには無理です。

つまり、オバさんのド素人感覚が捉えるツアー・ダウンアンダーは、新しいシーズンをスタートさせる「足慣らし」に相応しいコース難易度の、ステージレースというコトです。だから、去年あまり聞かなかった名前のライダーの活躍は、決してめずらしくはないのですよ。そこで、ひとつだけ。今回のステージレースを観戦していて、個人的にかなり気分のよろしくない現象に遭遇したので語らせてもらいます。

イサーク・デルトロは「第2のポガチャル」ではなく、将来に期待のライダー「デルトロ」です。若いライダーの活きのいい走りを見て、テレビの実況が盛り上がるのは理解できるけど、難易度低めのステージレースでの、たった一度の走りだけでタデイと比較しないでほしいですね。サイクルロードレースをこよなく愛する者として、いい気分になれませんでした。少なくともオバさんは、グランツールの山岳ステージで展開される総合勢の戦いに食らいつけたとき、初めて、イサークを「未来のスーパースター」と呼びたいです。

 

さて次は、シクロクロスの第13戦。スペインの地中海沿いのリゾート地ベニドルムで開催された、永久保存版レースを語りましょう。

スポーツ観戦の楽しみ方に精通したファンを心底楽しませてくれるレースには、やはり、絶対的なスーパースターが必要ですね。そのタレント性がまず第一。さらに、レース展開をこの上なく魅力的にするコース設定とか気象条件とか…このすべてが揃ったシクロクロス・ワールドカップ第13戦は、もう最高でした! いや~、本当に楽しめました。今季のシーズン、最初で最後のスーパースターふたりのガチンコ勝負ですよ。これは本人も語ったとおり、ワウト・ファンアールトがライバルの仕掛けに食らいつけたからこそ、楽しめた勝負でした。このあたり、さすがワウトくんだと感心しきりのオバさんです。

それにしても、改めてマチュー&ワウトの凄さを実感した9周回のレースでした。勝負どころになった登り坂舗装路の直線コースでの、彼らの爆発的な加速力に拍手喝采! たたみかけるような刺激は、最終周のバリアで転倒したワウトくんです。「まさか、ここで転ぶとは思いませんでした」なんて解説者のコメントも、エンターテイメントに厚みを加えておりましたよ。

日本時間で日曜夜のレースでしたが、この記事を書いている時点で3回も観たスペインのワールドカップ第13戦です。レースとして面白みを感じなかったオーストラリアのイベントとは、いったい何が違っていたのでしょう? ド素人見解で思うのは、やはり圧倒的なスーパースターの存在と、彼らがファンの期待通りの走りと勝負を見せてくれたかどうか…ここじゃないでしょうかね。

というワケで、2023~2024年シクロクロス・ワールドカップ第13戦は、オバさんの永久保存ディスクのケースに格納されます。