年が明けてまもなく、1月のオーストラリアで始まるワールドツアーが、サイクルロードレースの新しいシーズンの幕開けです。久しぶりのライブ映像は楽しみでも、個人的にはヨーロッパのレースが始まる3月からが「気合本番」ってところでしょうか。

今回のタイトルはF1でよく使われる言葉ですが、ロードレースではあまり見かけません。個人的な思考だけと、過去の歴史において団体(チーム)同士の戦いという感覚が少なかったのかな…。歴史に刻まれる伝説に登場するのは個々のライダーだし、80年代、90年代、そして2000年初頭のロードレース界に「勢力図」なんて見方はなかったのかもしれません。そんな業界の様相も、現在はガラリと変わりました。

勢力図としての鮮やかな印象は、何といっても去年のユンボ・ヴィスマです。グランツール全部を制し、そのシメのスペインでは表彰台独占の圧倒的な力を見せつけました。実際にポイントランキングのトップを獲ったのはUAEでも、2023年のロードレース勢力の一番上に君臨したのはオランダのワールドチーム…少なくともオバさんはそう感じました。では新しい年、2024年シーズンのワールドチームはどのような「力関係」でレースに臨むのでしょうか。オバさんのド素人見解を語ろうと思います。

 

まずは、メディアでも話題の注目ワールドチーム。プリモシュ・ログリッチが移籍したボーラ・ハンスグローエです。大物ライダーの移籍という観点で申し上げておきたいのは、ログラがキャリア・ハイの状態でボーラへ行った事実です。これは、キャリア下り坂のレジェンド・ライダーの移籍とは次元が違い、ドイツのワールドチームのツールにおける注目度は爆上がりです。実際、ボーラのチーム代表はすでにログラの単独エースを明言し、ジロの覇者ヒンドレーやエース級のウラソフがアシストする豪華ツールメンバーを示唆しております。単純思考だと、ログラの現在の実力とボーラの既存ライダーたちのアシストパワーでマイヨジョーヌに期待!となるんだけど、現実の物事の展開はそう単純ではありません。

ログラとボーラ・ハンスグローエの「マイヨジョーヌへの道」は、2024年がスタート地点になります。そう、始まったばかり。トップライダーを軸に、ツールの頂点を極めるまでチームが成長するには、最低でも1年必要だとオバさんは考えます。プロチームの強化に時間とお金がかかるのは業種に関係なく、F1は3年から5年ともいわれます。でもボーラの場合、核となるトップライダーのキャリア・ハイがあと何年続くか不透明なので、2024年から本気モードなワケです。ただ、個人的には現在の勢力図をひっくり返すまでには至らない、と考えております。そう、少なくとも今年のシーズン中では…。

 

もうひとつ、今年の勢力図に絡んできそうな注目チームとして、リドル・トレックを挙げておきます。「金はなんぼでも出すから、勝てるチームを作れ!」なんて、メイン・スポンサーの強力なプレッシャーがあったとか、なかったとか…。いずれにしても、惜しみなくお金を使っていいライダーを集めたなぁ、という印象の強い2024年のチームです。

ただ、オバさんの個人的見方だと、伸び盛りや実力のあるライダーを多く集めるだけでは、グランツールで勝つチームにはなれません。「あんたに言われたくねぇよ」と返されそうだけど、サイクルロードレースってそんなに単純なスポーツじゃないですよね。去年から今年にかけてのリドルの動きを見ていると、ジャイアンツがホームランバッターばかり集めたという、ずいぶん昔の日本プロ野球の「珍事」を思い出しました。

少なくとも去年よりは、活躍が目立つチームになるかもしれないリドル・トレック。はたして、ワールドチームの力関係を揺さぶることができるか…注目です。

 

2024年の勢力図ということで語ってきたけど、結局のところ、いわゆる「2強」の一角を崩せるチームはないと見ています。これは、海外の専門ジャーナリストも同じような見解を述べていました。タデイ・ポガチャルを軸としたUAE・エミレーツ。ログラやネイサンの抜けた穴は大きくても、まだ今年1年くらいは、既存のトップライダーたちで充分勝てるヴィスマ・リースアバイク(この新チーム名、自動翻訳だと「ヴィスマ・バイクを貸す」になりイマイチ強そうじゃない)。グランツールに限って言えば、この2強が支配する勢力図は、2024年も変化なしと申し上げておきます。

ただし、この栄光の確信が薄れていくシーズンになるかもしれないと、最後に添えておきましょう。