その第一報を目にしたときは、まるで胸に巨大な石が伸し掛かったよう。本当に、一瞬「ズシリ」ときた感覚は久しぶりでした。そして、思い出したことがあります。世の中にはコロナウイルスに対する強い抗体を、生まれながらに持ち合わせる人間がいて、レムコ・エヴェネプールはそのひとりだと報じた2年ほど前の記事です。

体質によっては、年間に3回も感染するライダーがいる一方、レムコはこの感染症とは無縁の日々をおくってきたのに…時期・タイミングともに最悪の状況で陽性になってしまいました。今年のジロ・デ・イタリアでもっとも応援していた大好きライダーの感染に、「なんで今、どうしてこのタイミングなのさ!」と憤るばかりのオバさんです。残念極まるとはまさに今の気分だけど、現実をしっかり受け止め、若き天才ライダーの明るい未来(平凡すぎる表現…)に期待しましょう。なんたって、まだ23歳。不完全燃焼した今年のジロはもうスッパリ切り捨て、経験と学習を兼ねてツールに出てみようかな…なんてね! レムコ親衛隊の面々も残りのジロは完全に消化レースだろうし、身体と脚をいたわりながら走れば、ツールでも充分仕事できるとド素人は考えます。ま、これはレムコ大好き人間の勝手な妄想に過ぎませんけどね。

というワケで、今回の掲載写真1枚目は、2023年ジロ・デ・イタリアの「レムコ・メモリアル」その1。途中リタイアしても、やっぱり記憶に残しておきたい輝きの姿です。

 

レムコのリタイア記事を見たときはショックでしたが、気が静まり冷静に考えるとウイルス感染にはリスクの高い今年のジロだった気がします。プロデビュー直後から注目され、人に囲まれる機会の多いレムコで、2023年のジロはその中でも最高レベルだったでしょう。事前の注目度、そしてレースが始まって以後も人々の期待通り話題てんこ盛りでしたね。初日TTの爆走、ひとつのステージで2度のクラッシュ(そのひとつはワンワン落車)、さらに9日間で4回マリアローザを着用し、ふたつのタイムトライアルを制して2勝を記録しました。もっと言えば、この9日間で唯一総合勢の勝負が発生した激坂で、ちょこっと遅れてファンやメディアを刺激してくれるエンターテイメント性(?)も発揮しました。

そんなベルギーの若き天才ライダーの周りには、普段のワールドツアーとは比較にならないほど多くの人間たちが集まってきます。そう、幾重もの輪になって。ゴール直後、人だかりの真ん中にいるレムコが毎日テレビに映っていましたね。レーススケジュールが進行し、ライバルたちとの総合争いの熱が高まるにつれ、レムコに寄って来る人間の数が増えていったのは想像に難くありません。

でもそれは、去年のブエルタで経験済みでしょ、なんて思われるかもしれないけど、去年のスペインと今年のイタリアではレムコに向けられる注目度の次元が違います。チームもそれを痛感し、大切なエースライダーの環境を守ろうと懸命です。今年のジロ最初の本格山岳レースでは、その大切なエースをゴール後にヘリコプターでホテルまで送り届けて、UCIに怒られる始末でした。身体のケアと休養の時間をできる限り確保したいという、切実な思いの現れだったとオバさんは受け止めました。

 

オバさんの個人的な見方ですが、少なくとも9日目のタイムトライアルまでは、マリアローザを争うライダーの中でもっとも多くの人間に取り囲まれていたのがレムコ・エヴェネプールです。ジロ開催前から少し懸念されていた、コロナ感染のリスクが一番高かったというワケですね。2位に40秒以上の大差をつけ総合トップに返り咲いた、その数時間後にジロを去る運命となった彼が消えたあと、マリアローザの行方は大混戦です。

レムコの走りが見られなくなったのは残念でも、オバさんの「お楽しみ」はまだ消えていませんよ。こうなったら、プリモシュ・ログリッチ。大好きライダー4人の中のひとりで、今年のジロはレムコの次に応援するライダーです。ふたりの対決に感じていた、どちらも敗けないでほしいなぁ…なんて複雑な気分がなくなって今はスッキリ! 悲運のエース、または、ガラス細工のような繊細な脆さがたまらない仕事人ライダーは、今年のジロで強さの片りんを垣間見せております。

 

レムコが去った後ではどうとでも言えるけど、あえて語らせてもらえば、グランツール常勝チームの強烈な攻撃に、ウルフパックがどこまで戦えたか疑問です。開幕前はあまりマークされなかった去年のブエルタとは大違いで、今年のジロのユンボやイネオスは、第1週目から組織的な攻撃を仕掛けてきました。それに対し、「ちょっとお疲れ気味かなぁ…」と感じざるを得なかった、レムコ親衛隊のウルフたち。オバさんのド素人予想では、3週目の「恐るべき山登りステージ」で完全孤立するレムコが見えました。

グランツールの総合で真っ向勝負を展開するとき、ユンボ・ヴィスマやイネオス・グレナディアーズを打ち負かすには、まだちょっと力不足だったかも…それが、今年のジロのウルフパックに感じたオバさんの想いです。

 

では、最後に2023年ジロ・デ・イタリアの「レムコ・メモリアル」その2。自宅のリビングに飾りたいような素敵な家族写真は、一番左がママのアニヤ、レムコ本人とその右に奥さまのウマイマ、そして右端に立つおじさまはパパのパトリックです。