パリの空の、抜けるような青が目に染みた2021年ツール・ド・フランスの最終ステージ。ホント、絵的にはキレイでしたねぇ。ずいぶん昔パリへ行ったとき、シャンゼリゼ通りに散乱するゴミの多さがカルチャーショックで、以後、この通りの名前を聞くと投げ捨てられたゴミを連想するようになりました。そんな悪いイメージを、オバさんの脳裏から消し去るに充分な美しい風景を堪能しましたよ。

今回のタイトルに使った「勝ち組」とは、ツール3週間の勝負に勝った人のことではありません。それはタデイ・ポガチャルただひとりあり、その強さや勝因に関して今さらド素人が語るまでもありませんね。今回の記事で示すのは、レースの勝敗以外に3つのテーマをオバさんなりに決め、「まちがいなく勝ったな」と感じた人やチーム。そのテーマが「印象」「記憶」そして「商売」です。

 

まず、ライダー個人に焦点をあてると、今回のテーマにおける最高の勝ち組はワウト・ファンアールトだと、オバさんは確信します。メディアが「ハットトリック」と絶賛する3つの勝利の内容が、人々に強く印象つけられ彼らの記憶に残ります。上級山岳(しかもモン・ヴァントゥ2回登坂)、個人タイムトライアル、平坦スプリントという、まったく異なる特性のステージでの勝利は、多くの人々に新しい時代の到来を実感させたのです。

クライマーはスプリント勝負できないとか、ルーラーは山岳コースでグルペットになるとか、従来のサイクルロードレースの常識を、ことごとくブチ壊したワウトくんの走りでした。この才能の覚醒は、サイクルロードレース界に新しい時代の到来を告げるといわれ、ツール終了後まもない時期の海外サイトは、マイヨジョーヌ獲得者よりワウトくんの記事の方が多いと感じられるほどでした。

187cm75㎏の体格で、プロヴァンスの巨人を制してしまう人。タイムトライアルでは2位に20秒以上の差をつけて勝ち、「スプリンターの世界最高の舞台」といわれるシャンゼリゼ・スプリントでトップを獲る人。その唯一無二にして強烈な印象と鮮やかな記憶は、少なくとも今後2~30年は人々に語り継がれるでしょう。

 

もうひとりは、多くの人が納得するだろうとオバさんが勝手に思うマーク・カヴェンディッシュ。2021年のツール・ド・フランスにおける彼の走りは、今さら改めてあれこれ言う必要ないでしょう。ワウトくん同様、強烈な印象と鮮やかな記憶で、この年のツールを語るとき人々がその名前を口にする「勝ち組ライダー」です。

ときに、シャンゼリゼ・スプリントに敗れたカヴは、ゴール直後に自転車をたたいて悔しがっていましたね。歴史に名前を刻む、偉大な記録に到達できなかった気持ちの表れだろうけど、後に冷静になったとき「もしかして…これで良かったんじゃね?」と思ったかも。来年のツールに、大記録達成という「希望の架け橋」で参戦できるかもしれない可能性を残したのです。今年の最終ステージを獲り35勝達成していたら、本人の意思と関係なく「もう思い残すことないだろ」と、引退の花道が引かれたでしょう。ま、これはオバさんの素人妄想にすぎないし、現時点でカヴの来年はまったく未定です。

 

さて、今回語る勝ち組テーマの3つ目、「商売」はチームとしてのお話です。つまり、世界最大規模のイベントで、スポンサーが泣いて喜ぶほどの宣伝効果を発揮したと、オバさんのド素人感覚で感じ取ったチーム。これを、今年のツール・ド・フランスの勝ち組にしました。

それは必然的に、上記で語ったライダーたちの所属チームとなります。とくに、ユンボ・ヴィスマ。落車妖怪に取り憑かれ、仲間を半分失い4人になってしまったのに、総合2位、ステージ4勝ですからね。個々のライダーの強さを存分にアピールし、「こんなライダーのいるチームって、すげー」てな印象を人々に与えて余りある活躍でした。

ヨナスが勝負師の顔でマイヨジョーヌに食らいつき、クスくんはサングラスを放り投げるパフォーマンスでステージ勝利。そして、山岳、TT、スプリントで大活躍したワウトくんの新時代の走りで、ジャージに描かれた企業名が全世界の人々の目に触れました。こりゃもう、商売という意味では今年一番の勝ち組。最終ステージに、イエローをあしらった特別ジャージでアピールしていたマイヨジョーヌのチームでも、ユンボには及ばなかったとオバさんは考えます。同じ見方だと、ドゥクーニンク・クイックステップも宣伝効果が高かったでしょう。カヴの走りとウルフパックの強烈な個性、さらにカヴがスタッフを怒鳴りつけたなんて話題も出て注目度抜群。ドゥクーニンクさんは今年でチームを去るけど、最後の年にいい商売ができたと思いますよ。

ちなみに、オバさんの素人感覚で見る今年のツールの負け組はイネオス・グレナディアーズ。フルームの放出で多少変化しても、古き良きグランツールの戦い方を継承するチームです。シクロクロッサーたちの「ひとレース全力疾走」に翻弄された今年のツールの、最大の被害者かもしれません。