1年前の今ごろを思い浮かべると、パリ~ニースの最終日がキャンセルされて以後、自転車ロードレースがヨーロッパから消えました。7月下旬に再開されるまで、前年の映像で凌ぐだけの日々は、ファンにとってまさに「凍り付いた時間」だったのです。それを思えば、スケジュール通り開催されるレースを楽しめる今年は、本当に幸せですね!

そんな、サイクルロードレース2021年シーズン。今年も常勝軍団「ウルフパック」が大暴れしそうな気配です。UCIワールドチームの中ではオバさんの一番好きなチームで、3月25日現在の11勝はもちろんトップです。とにかく、勝ち方がカッコいいですよね! 得意のスプリントステージは「絶対に譲らねぇよ」みたいな…(たまに譲るけど)。24日にベルギーで開催されたUCIワールドシリーズのワンデーレース勝利のカッコよさったら…文字通り「最高!」です。その場面がこれ。完璧なトレインから発射されたサム・ベネットと、後方のアシストたちのガッツポーズがシンクロする、いつものウルフパックのシビれるゴールシーンです。

これほど強く、カッコよく、そして強烈な個性を放つワールドチーム「ドゥクーニンク・クイックステップ」が、なぜ毎年、資金難に苦労しているのか。要因のひとつは、このカテゴリで何度か語ったサイクルロードレース界の構造なんだけど、大好きなチームだけに、今回もう一度同じテーマを取り上げようと思います。

 

ネット記事の情報によれば、窓・サッシメーカーのドゥクーニンクと床材メーカーのクイクッステップとの契約が、今年で切れるそうです。さらに、現在このチームに所属する30名のライダーのうち、なんと、26人の契約も今年いっぱいなんだとか。現時点で、2024年まで契約しているライダーはジュリアン・アラフィリップ、レムコ・エヴェネプール、そしてオバさん大好きのマウリ・ファンセヴェナント。もうひとりの名前は…忘れました。

ちなみに、「大好きマウリくん」の動向はしっかりチェックしており、この記事を書いている時点ではイタリアのステージレースに参戦中。山岳ステージでは頑張って6位に入っており、このレースの勝者がオバさんも応援するユンボのヨナス・ヴィンゲゴーでした。

ともあれ、ウルフパックが現在のふたつのスポンサーと契約更新できるかは、まったく不透明。どちらの企業もコロナの影響をまともに受け、今年の運営費用を削ってきているそうだから、どうなるか読めません。そんなチーム事情を知ってか知らずか、ボーラ・ハンスグローエの妙な揺さぶりがウワサされております。このドイツのワールドチームが、レムコに猛烈なラブコールを発信している…というウワサです。オバさんのド素人思考では、ペテル・サガンを引き継げるスーパースター候補を、喉から手がでるほど欲しがっているのかも。

レムコと所属チームが、2024年まで契約していると充分知ったうえで触手を伸ばすのだから、ウワサはさらに拡大し「ボーラがドゥクーニンクを買収するんじゃないか」なんて話も出る始末です。あくまでウワサだし、両チームのGMは何の反応もしてないけど、ウルフパックの大ファンとしては、こんな話がささやかれるだけでも悲しいです。

 

2018年73勝、2019年70勝、そしてコロナに翻弄された2020年でさえ39勝を記録し、勝利数トップの座をどこにも譲らないチームです。さらに去年は、所属ライダー30人のうち15人が勝利したという、群れで狩りをするオオカミ集団らしい個性をいかんなく発揮しました。これほど強く、これほど素晴らしい個性を持つチームが、資金難で買収されそうなのが、現在のサイクルロードレース界です。もっと言えば、ドゥクーニンク・クイックステップのチーム国籍はベルギー。その大地と民の心に、自転車ロードレースが深く、深く浸透している地域の最強プロチームなのです。

何かが、そしてどこかがプロスポーツの常識とズレております。

たぶん、これで3回目になると思うけど、最大の常識のズレは、チームの運営資金をスポンサーだけに頼らざるを得ない現実です。ここを何とかしない限り、ロードレースファンは今後も、大好きなチームの消滅を目の当たりにするという、悲しい体験を繰り返すでしょう。

去年の、ヨーロッパにおけるスポーツ中継の視聴率トップは、サッカーでもテニスでもなくツール・ド・フランスの第2ステージでした。そう、ジュリアン・アラフィリップが勝ったあのレースです。このテレビ中継で誰がどのくらい儲かったか知る由もないけど、少なくとも、グランツール放映料の「ほんの僅か」をチームに還元できるシステムの構築を、オバさんは強く望みます。