1998年10月22日(木) 快晴、朝夕冷え込む

マドリード⇒トレド (Toledo)  電車旅行

10月23日(金) 快晴

トレド⇒タラベラ (Talavera de la Reina) バスで西へ70km

10月24日(土) 晴

タラベラ郊外のYHへ移動

10月25日(日) 晴

タラベラ⇒マドリード 路線バス

10月26日(月) 連泊滞在

 

 

 

 

【改訂】定年欧州自転車旅行 目次

 

 

「間違いなくニセですよ」

 今日はサマータイム解除日。トレド、タラベラヘの電車とバスの小旅行を終えてマドリード市内に戻る。 

 天気がよく涼しくてルンルン気分でメイン道路を歩いていると、突然近くに止まったパトカーらしき二人乗りの車から声を掛けられ、手招きされる。何の疑問も感じず 、近づくと助手席側の男がポケットから手帳らしきものをちらつかせて、警察だという。そして、

「パスポートを見せよ」

 仕方なく出すとパラパラと一瞥するだけで、チェックするのにその丁寧さがなく直ぐに突き返してくる。ところが次の質問には唖然としつつ吹き出してしまった。

「ピストルを持っているだろう、出せ」

 失礼ながら、呆れて大袈裟に、

「ピストル? ワッハッハッハッ」

 と作り笑いをすると、途端に車の窓越しに手が伸びて小生の左胸ポケットをわしづかみにして、これは何だ、見せろッと来る。なんて粗っぽい警察官だ?! スペイン警察はこんな手荒なことをするのか?! と驚きながら、しかしこの時は未だ訝しく思いつつも警官と受け止めていたので、仕方なく手帳類を差し出す。これらもまともなチェックをせずに直ぐに突き返してくる。

「今、このマドリードで日本人がニセ札で事件を起こしている。日本紙幣を持っているだろう、見せろ」

「日本円は持っていない」

「では、どんな金を持っているのか」

「トラベラーズチェックとスペインマネーのみだ」

「よしわかった、行け!!」

 この「行け(GO!!)」の言い方を聞いて、英語には違いないがなんて粗野な表現かと驚く。英語に弱い自分が言うのはおかしいが、ゴー!! で締めくくった英語なんて、中学生の英語教科書でも出てこないのでは。野球のコーチャースボックスから、

「リード、リード、ゴー!!」

 とはよく耳にし口にもしたものだが。ところがその驚く寸前に、アクセルをいっぱいに踏み込んですごい勢いで車が走り去ったのである。

 この後メトロでYHに向かうのであるが、その車内に於いてもYHに着いてからもこの事件が思い出される。正直なところ未だ半信半疑ながら警察官と思っていた。ところがYHで、先日アルヘシラスのYHで会った神奈川県のSさんに再会したのでこの話をすると一笑に付される。

「警察官ともあろうものが、旅行者の胸ポケットをわしづかみにするなんて……間違いなくニセですよ」

 そう言われてみると全てがおかしかった。考えれば考えるほどオレはなんてトンマ、マヌケなんだ!! と情けなくなる。あの時、もしスペイン紙幣でもうっかりポケットから持ち出していたらわしづかみにされて脱兎の如く持ち逃げされたことであろう。

 もし人並みに神経が太く、ニセ野郎と気付く能力を持ち合わせていたら、

「日本円? 勿論沢山持っているよ。あまりに大金なので重くて持ち歩けぬよ。それで駅のロッカーに預けてある。調べるなら付いて来るかい?」

 とからかいながら、そして思わせぶりに車のナンバーも手帳に控える振りをして尚且つカメラを取り出す……どうしてオレはこの程度の芝居が出来ないのか?! 全て後の祭り。

 

 

タラベラ (Talavera de la Reina) の San Marcos の Al bergerieにて

定年欧州自転車旅行 1998.10.24(土) 10:00 晴