チスヴィルドゥレーイェ⇒エーベルトフト(Ebeltoft) 70.5km 
1998年6月24日(水)曇 25日(木) 連泊滞在

 

 

 

 

【改訂】定年欧州自転車旅行 目次

 

 

麗しの女人、素晴らしいコース
 雨雲に脅えつつ出発。海辺を通り抜けて西進すれば大丈夫と、地図に頼らずに乱暴に走り続けると森林地帯の真っ只中に迷い込む。山土のダートで自転車が走らないし、勿論標識も無ければ出会う人もいない。曇天且つ森林の中ゆえ天測が出来ず西も東もわからなくなる。ここは楽観精神で行くべし、左へ左へと進めばいずれは国道に出られる笘とペダルを漕いでいると、突然右手に、砂道よりかなり奥深く入った所に山小屋が見える。ホッとして尋ねに行こうとすると2人の男を従えた乗馬服スタイルの人物が近づいて来る。よく見ると女性、27、8歳くらいであろうか、額が広く目元涼やか、理知的な顔立ち、それでいて笑顔を絶やさぬ色白の黒髪美女。少しアグネスチャンに似る。
 道を問うと美しい声音で見事な英語が返って来る。自分はというと、自分の年、年齢差を忘れ気後れしてしまい正視も出来ないし肝心の英語も出てこない。
 昨日町で買った紙製の小さなデンマーク国旗を自転車の後部バッグに括り付けて立てているのであるが、彼女はそれをそっと触りながら、「日本人? 自転車で… どこから? どこまで?…」と問いつつ微笑んで握手に右手を差し出してくれる。しどろもどろで礼を言い別れたが、なんだか妖精にでも出会ったような不思議な気分。頬をつねる。ウキウキした気分でこの森林を走り抜ける。

 エーベルトフトのYHは、小さい港町の一角に立つ。珍しく小型で平屋館。民家に挟まれて窮屈そうに立つ。
 小さい街だが、観光客がかなり来ている。ガラス美術館や世界一小さい市庁舎等がある。臨海展示の木造フリゲート艦ユラン号もなかなかいい。1862年建造で約30年間戦役に就いた実戦艦。両舷側に上下2段に巨砲数十門がずらりと並ぶ。艦上で食用の豚とたわむれる当時の乗組員、戦闘中の砲撃時の艦上の混乱ぶり等を描いた迫真の絵などなかなか面白い。
 YHに戻ると、好天の庭で60歳前後のチャリダー夫婦が愛車のメンテをしている。ビールを飲みながらじっくりと観察する。2台の自転車を逆立ちさせて後輪同士車輪を交換している。そのあとタイヤのキズの有無、スポークの張り具合、回転させての振れの有無、それはそれは手慣れた動作であるが実に丁寧。可愛くて仕方の無い赤子の孫を湯に浸ける時の如し。そしてブレーキの調整、チェーン等への油差しと続く。小生はまだ一度も注油も拭き掃除もなし。

 

 

エーベルトフト(Ebeltoft) のYHにて夕食中

買ってきた冷凍食品を寮管理人の奥さんがオーブンで焼いてくれる

ビールは350ccで140円、多飲して夕食

右後方に逆立ちの自転車が見える 手入れ方法を見学する

定年欧州自転車旅行 1998.06.24(水) 20:35 快晴